大腸癌増悪にお口の中の菌が関わっている!?

2018-07-09
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メイトーブランドの協同乳業株式会社は、横浜市立大学の日暮琢磨診療講師らとの共同研究で、大腸癌患者の大腸癌組織と唾液から、共通した細菌株が存在していることを発見しました。すなわち、口腔内F. nucleatumが大腸癌に関与していることを強く示唆しています。

お口の中の菌が大腸癌組織へ移行

2012年以降、F. nucleatum(フクソバクテリウム ヌクレアタム)が大腸癌の病態や予後に悪影響を及ぼすといった報告例が増えて、非常に注目されています。
F. nucleatumは、主に口腔内に生息する細菌で歯周病の原因菌の一つです。
本来、ヒトの腸内からは検出されないことが多く、なぜF. nucleatumが大腸癌に影響しているのか不明だったそうです。

協同乳業株式会社の研究グループは、F. nucleatumが口腔環境に多くいる菌種であることに着目し、「口腔内F.nucleatumが大腸癌組織へ移行しているのでは」という仮説を立てました。
そこで、14名の患者を対象に、内視鏡を用いて採取した大腸癌組織及び唾液検体を培養、解析しました。

研究の流れ
その結果、14名の患者のうち8名において、大腸癌組織と唾液の両方からF. nucleatumが検出されました。
次に、その8名の検体より分離されたF. nucleatumを対象に、AP-PCR法(※1)を用いて菌株レベルで解析した結果、8名中6名では、大腸癌組織と唾液の両方から同一菌株(※2)が検出されました。
結果の一例 患者Eから分離したF. nucleatumの代表菌株(※1)のAP-PCRパターン
バンドの検出パターンが同じだと同一菌株と判定できるそうです。
大腸癌組織から1菌株(点線より左)、唾液から6菌株(点線より右)が同一菌株であることがわかります。つまり、大腸癌組織と唾液から共通した菌が存在していると結論づけられました。

F. nucleatumは大腸癌で高頻度に検出され、大腸癌への関与が強く疑われるため、この結果から口腔内の環境に由来することが強く示唆されるそうです。
今後、大腸癌の新たな治療法、予防法、リスク評価などにつながる可能性がある発見になるかもしれません。 ※1 菌株とは、同一種内の生物個体のことであり、ヒトの場合、各個人に該当する。菌株毎に特徴や能力に差が認められる。
※2 AP-PCR法は、任意のプライマーを用いて鋳型DNAを増幅させることで、菌株レベルで増幅DNA(数とサイズ)に再現性高く差が出ることを利用して菌株を識別する方法。感染性病原菌の菌株特定などに広く利用されている。

大腸癌は年々増加している

国立がん研究センターのがん情報サービス「2018年のがん統計予測」において、
大腸癌は
・部位別がん罹患数予測で男女合計第1位
・部位別がん死亡数予測で男女合計第2位
と増加傾向が続いており、早急な対策が求められています。

この研究で、F. nucleatumの由来が、口腔内であることが少なくとも4割以上の大腸癌患者で確認されたため、協同乳業は今後の大腸癌の予防や治療において非常に意味のあることだと考えられるとしています。
具体的には、口腔内あるいは腸内の細菌を調べることにより、大腸癌の簡便な診断法が開発できる可能性。また、口腔内および腸内の細菌叢を制御することにより、大腸癌の治療や予防につながっていく可能性も示している考えられます。

今後の展望

一方で口腔内の歯周菌(F. nucleatum)が大腸癌組織へ移行・感染する経路に関しては、まだ明らかにされていません。
協同乳業株式会社の研究チームは、論文データは症例数が少ないため、より多くの大腸癌患者を対象にさらなる研究を進めていくそうです。
また、今回の研究で得られたF. nucleatum分離菌株を用いて、新たな大腸癌治療法や食品を含む予防法につながる研究に取り組んでいくと、今後の展望を掲げています。
今後の大腸癌の治療に期待していきたいですね。

この研究成果は、英国消化器病学会(British Society of Gastroenterology)の機関誌「Gut」に6月23日(日本時間)にオンライン公開されました。
ジャーナル:Gut
タイトル:Patients with colorectal cancer have identical strains of Fusobacterium nucleatum in their colorectal cancer and oral cavity
(大腸癌患者は大腸癌組織および口腔内に同一菌株のFusobacterium nucleatumを保有する)

著者:Yasuhiko Komiya(※1,2), Yumi Shimomura(※3), Takuma Higurashi(※1), Yutaka Sugi(※3), Jun Arimoto(※1),Shotaro Umezawa(※1), Shiori Uchiyama(※1), Mitsuharu Matsumoto(※3), Atsushi Nakajima(※1).
(※1)横浜市立大学 肝胆膵消化器病学、(※2)横須賀市立うわまち病院、(※3)協同乳業㈱研究所 技術開発グループ

参考文献

1.協同乳業株式会社:大腸癌の増悪化に関わるFusobacterium nucleatumは口腔内に由来する ~歯周病菌が大腸癌に関わっている。大腸癌の新たな治療法や予防法に繋がる可能性~PR.Times https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000033623.html(最終アクセス:2018年7月5日)

2.コスモ・バイオ株式会社https://www.cosmobio.co.jp/support/technology/a/next-generation-sequencing-introduction-apb.asp(最終アクセス:2018年7月5日)

3.国立がん研究センター がん情報サービスhttps://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html(最終アクセス:2018年7月5日)

4.がん対策推進基本計画(平成30年3月)                           http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000196975.pdf(最終アクセス:2018年7月5日)

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