前回、子どもの頃の道端によくあったウンコ跡についての話を書きました。みなさんはウンコを踏んだことがありますか?私はあります。人生で一度だけ。
それがあまりに衝撃的でトラウマになっているために、もう二度と踏まないように注意深くなっている。だから感知センサーが鋭くなったのだと思います。
連載「もっとウンコについて話そう!うんコラム 」
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平和な道路に忽然と現れるウンコ跡。それはだいたい点点と続いているか、ズルズルとなすりつけた形になっています。それは汚れを落とした形跡にしては広範囲、まるで「自分だけ踏むのはイヤだ!後から来た誰かを道連れにしてやる!」と誘い込むかのような負のメッセージ。そこにまんまと嵌められた複数の足跡。
でも、そもそも踏んだことに気づかないなんてことがあるでしょうか?
まず臭います。たまに、何か臭いを感じると靴の裏を確認することもあるほど。それ以前に一歩踏んだ時点で感触で分かるでしょう?なのにどうして範囲を広げるのでしょうか。1カ所だけにこすりつければ被害は最小限にとどめることができるのに。
…と、大人になった今なら冷静にそう考えることができるのですが、子どもの頃はそうはいかなかった。
その日私は真新しいお姫様の絵がついたズックと、フリルのハイソックスを履いていました。うちは子どもに流行り物は与えないという厳しい教育方針だったので、みんなと同じものは買ってもらえなくて、欲しくて欲しくてさんざん説得してようやく手に入れたのです。そんな大切な靴と靴下を履いているのだから当然警戒しています。
でもその日は見たこともないような、大きくてピカピカのブツが、電柱のそばにあったのです。子どもたちは棒を持って取り囲んでいましたが、あまりにも立派なので傷をつけるのに躊躇していました。ここはひとおもいに踏んでみるべきじゃないか?でもそこにいたメンバーは全員、踏んだことのある経験者。一度も踏んだことがないのは私だけでした。
人生で(といっても5歳くらい)一度も踏んだことがないのは未熟なのかな?とまるで通過儀礼のように、「よし、やってみる!」と奮起したのです。
でも経験のない私は、それが滑るものだなんて知らなかった。
ほんのちょこっと、つま先でつつくだけのつもりが、力加減を間違え、“ズルッ!!”思いっきり転んでふくらはぎまで、つまりハイソックスまで台無しに!キャー!蜘蛛の子を散らすように友達は逃げ、私は泣きながら家に帰りました。
普通ならその場で靴も靴下も脱いで帰ったかもしれないけど、やっと買ってもらえた宝物。ウンコがついたからって捨てられない。そのままの足で、4階まで階段を上りました。
帰宅した私を見た母の、ムンクの叫びのような顔は忘れられません。
「家に入ってこないでー!!」と私を引っ張り出し、マンション共用の掃除用のホースでジャブジャブ洗われて靴も靴下もそのまま焼却炉へ。
足跡のついた階段から道路まで掃除している母を見て、コトの重大さに気づきました。
さらにその後、仕方なく転んだのではなく、“わざと踏んだ”のだということがバレると、こっぴどく叱られたばかりか、もう二度とキャラクターものは買ってもらえないという暗黒人生がスタートしたのです。(もともと親の趣味じゃなかった上に「大事にしないから」という理由を与えてしまった)
いまでも道路に長くこすりつけた跡を見ると胸が痛みます。いざ自分が当事者になると、ショックで後のことなんて考えられないんですよね。
でも二次被害を広げないよう、みなさんもうっかり踏んでしまった時はその場で解決しましょうね。
ライター お紙(おかみ)
広告制作会社にてコピーライターを経験したのちフリーランスに。広告や雑誌で企画、編集、ライターを担当。先祖代々、子どもの頃からの便秘体質のためいつもウンコのことばかり考えているうち、食べ物の重要さに目覚めマクロビオテックなどざまざまな料理を勉強。もともとの趣味であったインテリアや雑貨の蒐集も高じて、カフェを経営していたこともある。
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