オーストラリア博物館指揮の『コアラゲノム・コンソーシアム』がコアラの全ゲノム配列(遺伝情報)解読に成功

2018-08-28
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オーストラリア博物館が指揮する生物学研究プロジェクト『コアラゲノム・コンソーシアム』がコアラの全ゲノム配列(遺伝情報)の解読に成功しました。同プロジェクトには京都大学霊長類研究所の早川卓志特定助教も参加しており、コアラのユニークな生態を解き明かすべく、今後さらなる研究の発展が期待されています。

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オーストラリアに住む愛らしい姿かたちをしたコアラは、子どもを母親がお腹の袋で育てる有袋類の仲間で、日本の動物園でもおなじみの人気者ですよね。
でも、生息地であるユーカリ林の減少や感染症などにより、近年絶滅が危惧されていることをご存知でしょうか。
コアラを保全していくためには、コアラのユニークな生態やその遺伝的基盤を解明することが重要となりますが、この度、オーストラリア博物館が指揮するコアラの遺伝に関する研究プロジェクト『コアラゲノム・コンソーシアム』がコアラの全ゲノム配列を解読することに成功しました。

オーストラリアのユーカリ林に生息するコアラ(写真提供:早川卓志氏)

ゲノムとは、遺伝子(gene)の全体(-ome)という意味で、DNAがもつすべての遺伝情報のこと。
DNAは、生物の細胞の核の中にある染色体にある物質で、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4種類の分子から構成されており、その配列によって生物の特徴が決まります。
生命を形作る設計図に例えられることもあります。

コアラの主食であるユーカリの葉は繊維質で毒性も強く、他の生物には簡単には消化ができないのですが、コアラは母親の便を子どもが食べることでユーカリ を分解できる腸内細菌を受け継いでいることが従来の研究で明らかになっていました。
しかし、コアラ側の遺伝的背景は詳しく知られていませんでした。

今回、コアラの全ゲノムが解析されたことで、コアラは食べ物中の毒を苦味として舌で感じる苦味受容体という遺伝子を他の有袋類に比べて多く持っていることがわかりました。
この苦味受容体遺伝子の数が多いほど、多様な毒性分子を感じることができるので、コアラはユーカリの毒性の程度を苦味感覚によって識別し、自身が食べられる適切なユーカリの葉を選べるように進化したと考えられます。

また、ゲノム解析によって嗅覚受容体や解毒代謝酵素にも特徴があることもわかり、コアラは進化の過程で、食べられるユーカリを識別する味覚・嗅覚と解毒する酵素を獲得してきたことが示唆されます。
ほかにもコアラの生態や保全に関連する多くの遺伝子が見つかっており、今回の研究成果が、野生の個体群の保全のみならず、動物園などの飼育下にあるコアラの福祉や繁殖の助けとなることが期待されています。

このプロジェクトには京都大学霊長類研究所の早川卓志特定助教も参加しており、その研究成果は7月3日付けでイギリスの科学雑誌『Nature Genetics』のオンライン版(https://doi.org/10.1038/s41588-018-0153-5)に掲載されています。
こちらは無料で誰でも読むことができます(英語)。

研究について詳しくは 京都大学のホームページ京都大学のホームページから見ることができます。

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