食物アレルギーを防ぐには腸内細菌を整えるといいかも

2017-02-17
リンク

厚生労働省の発表によると日本人の約1-2%において何らかの食物アレルギーがあるといわれています。乳児に限ると約10%といわれており、深刻なものでは命に関わることもあるので対策が必要とされています。
しかし、現時点では有効な治療法はなく、予防や発症時の対策を行うしかありません。
今回は、腸内細菌と食物アレルギーに関する研究を紹介します。

連載「腸内フローラ最先端。論文を読み解き! 」

記事一覧をみる
Dave Pot/Shutterstock.com

食物アレルギーは増加傾向にある

日本では、10年前に比べてアレルギーを発症する患者が増えています。2013年に文部科学省が行った調査によると食物アレルギーを有する児童は約45万人で全体の4.5%を占めていました。2004年の調査では約33万人で全体の2.6%だったので、患者数が増加していることがわかります。 アメリカでも食物アレルギーは大きな問題となっており、3歳以下の子どもの6-8%、大人では3%といわれています。また、子どもに関しては1997年から2011年の間に1.5倍となりました。 このように世界各国で食物アレルギーは増加傾向であり、原因として衛生環境や食事の変化、抗生物質の乱用などが考えられています。 汚いのはもちろんよくないですが、殺菌、無菌とうたわれているように子どもの頃から菌に触れる機会が少ないと、かえってアレルギーを起こしやすくなるのではないかといわれています。 アメリカの研究では、生後1年以内に抗生物質を処方された回数が多い子どもは、抗生物質を内服する機会が少なかった子どもよりも食物アレルギーを発症しやすいことも明らかになっています。 一方で、最近注目されているのが食物アレルギーと腸内細菌の関係です。

腸内細菌が食物アレルギーを防ぐ可能性

カナダからの報告では、166名の乳児の便を生後3か月と1年で調べたところ、離乳食が始まる前の腸内細菌叢が食物アレルギーの発症に関連していることがわかっています。 アレルギー反応は、1歳の時点で牛乳、卵白、大豆、ピーナッツに対する皮膚反応で評価しました。アレルギー反応が起きなかった子は、アレルギー反応を起こした子に比べて腸内細菌の種類が豊富だったそうです。 また、エンテロバクター科の細菌がバクテロイデス科の細菌より多く、ルミノコッカス科の細菌は少ないことが明らかになりました。 多くの種類の腸内細菌が腸内に存在した方が、肥満や炎症性腸疾患などを発症しにくいことは知られていますが、食物アレルギーに関しても同じことがいえるようです。

特定の種類の腸内細菌が食物アレルギーを予防する可能性

アメリカの研究チームは、腸内細菌の中でもクロストリジウム属の細菌が食物アレルギーを予防するカギを握っていることを突き止めました。 研究チームは、腸内細菌が全く存在しない無菌マウス、抗生物質を投与して腸内細菌を減らしたマウス、正常の腸内細菌をもつ正常マウスの3グループにわけ、ピーナッツを投与した時の反応を見ました。すると無菌マウスと抗生物質で腸内細菌を減らしたマウスは、正常マウスに比べてアレルギー反応が強く出ることがわかりました。 次に、腸内に常在している細菌と知られるバクテロイデス属とクロストリジウム属の腸内細菌をそれぞれ無菌マウスと抗生物質で腸内細菌を減らしたマウスに投与してみました。 すると、バクテロイデス属の細菌ではアレルギー反応を軽減できなかったことに対し、クロストリジウム属の細菌ではアレルギー反応を抑制できることが明らかになりました。 このことから、クロストリジウム属の細菌が食物アレルギーを予防するはたらきをもっていることがわかりました。 さらに研究チームは、クロストリジウム属の細菌が免疫に関わるタンパク質を分泌することによって、アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)が腸の粘膜を通りづらくなることも明らかにしました。 今回の研究結果から、クロストリジウム属の細菌には、食物アレルゲンが血液中に入ってアレルギー反応を起こすことを防ぐ効果を期待できそうです。研究チームはクロストリジウム細菌を含むプロバイオティクス治療の開発のために特許を申請しているそうなので、今後が楽しみです。

食物繊維や乳酸菌も食物アレルギーに効く可能性

クロストリジウム属の細菌には、アレルギー反応を抑制する効果を期待できそうですが、他に腸内細菌に関連した食物アレルギーへの対処法はないのでしょうか。 オーストラリアの研究チームは、マウスを対象とした研究で、食物繊維を食べさせると腸内細菌によって短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)が産生され、アレルギー反応を軽減できることを明らかにしています。 さらに、同研究で食物繊維だけでなく免疫に関与するビタミンAも不足させないように投与することがアレルギーの予防には大切であることがわかっています。 他にも、善玉菌であるビフィズス菌を妊娠中の女性が服用すると出産後の子どものアレルギー発症率が低下した、アレルギー体質の子どもに乳酸菌を投与するとピーナッツに対するアレルギー反応を抑えることができた、という報告などがあります。

さいごに

世界的に増えている食物アレルギーに対する治療法として腸内細菌が注目されているようです。 食物繊維や乳酸菌などが食物アレルギーの予防に効果を期待できるようですが、まだ治療法として確立しているとはいえない状況です。 今後、今回紹介したクロストリジウム属の細菌も含めて、腸内細菌が食物アレルギーの治療法として役立つ方法が見つかることを願っています。
Dietary Fiber and Bacterial SCFA Enhance Oral Tolerance and Protect against Food Allergy through Diverse Cellular Pathways.を元に引用改変

参考文献

参照サイト

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/25/12/1342460.htm

Azad MB, Konya T, Guttman DS et al. Infant gut microbiota and food sensitization: associations in the first year of life. Clin Exp Allergy. 2015 Mar;45(3):632-43. doi: 10.1111/cea.12487.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25599982

Stefka AT, Feehley T, Tripathi P et al. Commensal bacteria protect against food allergen sensitization. J Allergy Clin Immunol. 2013 Sep;132(3):601-607.e8. doi: 10.1016/j.jaci.2013.05.043. Epub 2013 Jul 27.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25157157

Love BL, Mann JR, Hardin JW et al. Antibiotic prescription and food allergy in young children. Allergy Asthma Clin Immunol. 2016 Aug 17;12:41. doi: 10.1186/s13223-016-0148-7. eCollection 2016.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27536320

Tan J, McKenzie C, Vuillermin PJ et al. Dietary Fiber and Bacterial SCFA Enhance Oral Tolerance and Protect against Food Allergy through Diverse Cellular Pathways. Cell Rep. 2016 Jun 21;15(12):2809-24. doi: 10.1016/j.celrep.2016.05.047.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27332875

この著者の他の記事を読む

似た腸活キーワード

関連記事

Facebook Twitter リンク

ページトップへ戻る