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過敏性腸症候群では腸内細菌のバランスが崩れている

過敏性腸症候群は、命に関わる病気ではないものの生活の質を落とす可能性のある病気です。
日本人の約10-15%が過敏性腸症候群を発症しており、消化器内科外来を受診する患者の半数以上を占めているといわれることもあります。原因として最も疑われているものはストレスですが、最近では腸内細菌の関わりも注目されています。
今回は過敏性腸症候群と腸内細菌に関する研究を紹介します。

Sofi photo /Shutterstock.com

過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群は、若い世代である10-40歳代で発症することが多い病気です。 大きく分けると3タイプあり、下痢を繰り返す下痢型、便秘を繰り返す便秘型、下痢と便秘を交互に繰り返す混合型です。若い男性では下痢型が多く、女性では便秘型と混合型が多いといわれています。 「下痢や便秘ぐらい大丈夫」と病院に行かない方も多く、知らない間に慢性化していることもあります。しかし、学校や会社に行く途中で便意を感じて電車を降りなくてはいけない、大事な会議や商談を便意で抜けなくてはいけない、など毎日の生活に支障をきたす可能性があります。 過敏性腸症候群の発症原因の詳細は未だにわかっていないことも多いですが、ストレスや免疫の異常、腸管の運動異常などが指摘されています。最近では腸内細菌のバランスの乱れも原因として注目されています。 治療法としては、腸の動きを整える薬や腸での水分吸収を調整する薬、整腸剤などの内服があります。他には、ストレスに自ら気付き、減らすことによって過敏性腸症候群の症状を改善するために、カウンセリングを行うこともあります。

過敏性腸症候群の腸の中では何が起きているのか

過敏性腸症候群で最も多い原因として疑われているものにストレスがあります。ストレスを感じると腸からセロトニンとよばれる物質が分泌されて腸の運動異常を起こし、過剰に動くと腹痛や下痢を繰り返します。また、ストレスで自律神経のバランスが崩れることにより、下痢や便秘になり過敏性腸症候群を発症する可能性もあります。 今までの研究で、腸に炎症が起きた後に過敏性腸症候群が起こりやすいことがわかっていますが、発症しやすい人としづらい人の違いはストレスの有無であったことが明らかになっています。 このように、過敏性腸症候群は主にストレスによる腸管の機能異常で起きると考えられておりました。 しかし近年、過敏性腸症候群に腸内細菌が関わっている可能性が指摘され、さかんに研究が行われています。例えば、下痢型の過敏性腸症候群では小腸の中で腸内細菌の異常増殖を認めたり、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が減少していることがわかっています。 また、便を調べてみるとProteobacteriaやある種のFirmicutesが増加していることが明らかになっています。

プロバイオティクスが過敏性腸症候群の治療法になる可能性

腸内細菌が過敏性腸症候群に関連すると明らかになってからは、抗菌薬やプロバイオティクスの投与だけでなく健康な方からの糞便移植などを試した研究結果が報告されています。 研究によって、効果が出たものと出なかったものがあり、現時点で結論には至っていません。しかし、プロバイオティクスに関しては乳酸菌やビフィズス菌などのある種の善玉菌を投与すると過敏性腸症候群の症状が改善するのではないかと期待されています。 例えば、イタリアの研究チームは、過敏性腸症候群の患者と健常な方の腸の粘膜を採取し、乳酸菌を投与したところ、炎症を抑える効果があることを確認しました。 今までは過敏性腸症候群に対する治療は、腸の動きや腸での水分の吸収量を調整したり、ストレスを抑えるようなものがメインになっていましたが、最近の研究結果により腸内細菌のバランスを整えることも重要ではないかと考えられ始めています。 ただし、過敏性腸症候群に対するプロバイオティクス治療に関しては、1種類の菌よりも多数を併せたものがよいのではないか、1種類の菌だとしても種類によって効果の出方が違うのではないか、などとまだ議論の余地が多くあります。

さいごに

日本人の約10-15%が発症しているとされる過敏性腸症候群にも腸内細菌が関連している可能性があるようです。過敏性腸症候群の腸内では善玉菌であるビフィズス菌や乳酸菌が減少し、腸内細菌のバランスが崩れていることが指摘されています。 今後、さらなる研究が進み、プロバイオティクスや糞便移植など過敏性腸症候群に対する画期的な治療法が確立されることが期待されます。

参考文献

1) Compare D, Rocco A, Coccoli P et al. Lactobacillus casei DG and its postbiotic reduce the inflammatory mucosal response: an ex-vivo organ culture model of post-infectious irritable bowel syndrome.  BMC Gastroenterol. 2017 Apr 14;17(1):53. doi: 10.1186/s12876-017-0605-x.
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28410580)

2) Allen AP, Clarke G, Cryan JF et al. Bifidobacterium infantis 35624 and other probiotics in the management of irritable bowel syndrome. Strain specificity, symptoms, and mechanisms. Curr Med Res Opin. 2017 May 19:1-3. doi: 10.1080/03007995.2017.1322571.
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28436237)

3) Lacy BE. Hot Topics in Primary Care: Role of the Microbiome in Disease: Implications for Treatment of Irritable Bowel Syndrome.  J Fam Pract. 2017 Apr;66(4 Suppl):S40-S45.
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28375407)

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