長寿に関する研究は、世界各国でさかんに行われていますが、未だに決定的な原因の特定はできていません。腸の中には腸内細菌が100兆個以上存在し、人間の免疫に大きな影響を与えていることがわかっています。また腸管には、免疫細胞の約6-7割が存在しているので、腸内環境が良い方は健康を長期にわたって維持できる可能性があるといわれています。今回は、長寿と腸内細菌の関係に注目した研究を紹介します。
老化の原因は活性酸素?
今までの医学的な報告では、老化の原因として活性酸素による酸化ストレス、免疫力の低下、遺伝的な要因、ホルモンバランスの異常などが挙げられています。活性酸素は、体にとって有害なものを処理する時に発生するもので適量であれば問題ないものの、増えすぎると逆に体を攻撃してしまい、老化を促進させると考えられています。活性酸素の発生原因は、タバコ、過食、酒、ストレス、激しい運動、紫外線などです。 つまり老化を防ぎ、長生きするためには日頃から良い生活習慣を心がけることとバランスの良い適量の食事を摂ることによって腸管免疫力を活性化させることが大切です。 では次に、実際に長生きする人の腸内にはどのような細菌がいるか調べた研究を紹介します。長生きする人は良い腸内細菌をもっていた
イタリアの研究チームは100歳以上の高齢グループと年齢の若いグループの便に含まれる腸内細菌を同定する研究を行い、105歳以上の長寿の方の腸内には健康に関わる腸内細菌の割合が増加していることを2016年5月に「Current Biology」誌に発表しました。 研究では、69人の参加者の便を採取し、DNAを抽出してどのような腸内細菌が存在しているか同定しました。69人の参加者は年齢ごとに以下の4つのグループに分けられました。- 22-48歳グループ(女性8人、男性7人、平均年齢30.5歳)
- 65-75歳グループ (女性7人、男性8人、平均年齢72.5歳)
- 99-104歳グループ (女性14人、男性1人、平均年齢100.4歳)
- 105-109歳グループ (女性18人、男性6人、平均年齢106.2歳)
長寿報告は国によっても異なる? 今後の各国報告に期待
長寿の方の腸の中には、健康維持に関連する良い腸内細菌群がいることがわかりました。しかし、今回の研究を全ての国の方に当てはめても良いのでしょうか。実は、中国からも100歳以上の長寿の方の腸内細菌群に関する報告が2015年にされています。報告によると、長寿の方ではルミノコッカスとクロストリジウムが多いという結論になっています。つまり、今回紹介した研究結果とは異なる腸内細菌群が長寿に関連するということが明らかにされています。 最近、国によって腸内細菌群が異なるという報告もされています。今回紹介した研究はイタリア、2015年の報告は中国なので、研究結果が違ったという可能性があります。 今後も各国から長寿に関連する腸内細菌群の報告があるかもしれません。参考文献
1) Biagi E; Franceschi C; Rampelli S et al. Gut Microbiota and Extreme Longevity. Curr Biol. 2016 May 11. pii: S0960-9822(16)30338-4. doi: 10.1016 (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27185560)
2) Wang F; Yu T; Huang G et al. Gut Microbiota Community and Its Assembly Associated with Age and Diet in Chinese Centenarians. J Microbiol Biotechnol. 2015 Aug;25(8):1195-204. (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25839332)
医者 大塚真紀
腎臓、透析、内科の専門医。医学博士。
現在は夫の留学についてアメリカに在住。アメリカでは専業主婦をしながら、医療関連の記事執筆を行ったり、子供がんセンターでボランティアをして過ごしている。
アメリカにいても医師という職業を生かし、執筆を通して患者さんやその家族のために有益な情報を提供できたらと願っている。