「よし、ダイエットをしよう!」と決めたとき、あなたは何から始めますか?
過半数の人は、真っ先に「炭水化物を制限する」のではないでしょうか。
「炭水化物は太る」というイメージがありますよね。本当にそうなのでしょうか。
「炭水化物」とは何なのか正しく理解していないと、リバウンドを繰り返したり、便秘になってしまったり、腸内環境のバランスを崩しかねません。
この記事は、帝京平成大学・松井輝明教授による「炭水化物への間違った理解から招く腸内劣化への警告」セミナーについてレポートしています。
登壇者プロフィール
(帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科教授)
糖質制限は“腸”キケン?
スーパーやコンビニなど至るところで、“糖質カット”商品を見かけるようになりましたよね。ダイエットの定番となりつつある「糖質制限」。健康的なイメージを抱きがちですが、危険性はないのでしょうか。
松井教授:
「そもそも糖質制限とは、『糖を摂取しないことで血糖値の上昇を抑え、脂肪を分解する』ことを目的に、主食である白米などの炭水化物を制限するという考え方です。」
血糖値とは、血液中に含まれる糖(グルコース)の濃度のことをいいます。
私たちは、ご飯やパン、肉や魚などさまざまな食品から栄養素を摂取していますよね。なかでも、お米や砂糖など糖質が多く含まれている食品は、血糖値を上昇させやすいのが特徴です。
松井教授:
「糖質制限の主なメリットは3つあります。」
・食後の血糖値上昇を抑える
・脂肪をエネルギーに変えることで短期間で減量ができる
・糖質過多を防ぎ、糖尿病のリスクを軽減させる
松井教授:
「一見、メリットしかないように思える糖質制限ですが、2016年に行われた『食事制限ダイエットに関する調査』によると、糖質制限により体調不良を訴える人が多くいることが分かりました。」
上記グラフの通り、特に「集中力がなくなった」「頭がぼーっとするなど、無気力になった」など、精神的な影響を指摘する人が多いようです。また、便秘を訴える人も多くいることがわかります。
ごはんやパンなどの炭水化物は、“主食(しゅしょく)”と呼ばれていることからも分かるように食事の中心であり、とても大切なエネルギー供給源です。
むやみやたらに制限してしまうと、体調を崩しかねません。では、どのように炭水化物と付き合っていけばよいのでしょうか。
炭水化物=糖質、その考えは捨てよう
平成27年4月に「食品表示法」が施行され、加工食品に栄養成分表示が義務化されるようになりました。そのため、私たちは容器の裏面などを覗けばさまざまな食品の栄養成分を知ることができます。
みなさんは、栄養成分表を正しく読み取ることができているでしょうか。
松井教授:
「『炭水化物=糖質』だと多くの人が思っていますが、そうではありません。炭水化物とは、糖質と食物繊維を合わせたものだということを覚えておく必要があります。」
炭水化物量が糖質量だと思っているのは、実は大きな間違い!
例えば、ごはんお茶碗1杯分(約150g)の炭水化物は55.7g。
糖質量を求めるには、炭水化物から食物繊維を引く必要があります。
炭水化物-食物繊維=糖質
55.7g -0.5g =55.2g
松井教授:
「つまり、糖質制限をすることで食物繊維の摂取量も減少させていることになります。もともと食物繊維は不足しがちなので、さらに不足してしまうことにも・・。
糖質制限は、腸内環境のバランスを崩してしまう可能性があります。
それだけでなく、最新の研究では、日本人の腸内には炭水化物を好む腸内細菌が多く潜んでいることが分かってきています。」
この研究は、アメリカ、デンマーク、スペイン、フランス、スウェーデンなど合計11ヶ国と日本の健常者の腸内フローラを比較したもの。日本人の腸内フローラは、他国と比べて「炭水化物代謝」に関わる機能が豊富であることがわかりました。
日本人は、やみくもに炭水化物を制限するのではなく、腸内細菌を味方にする食事方法にしたほうがいいかもしれませんね。
これでもう太らない⁈賢く炭水化物を選ぶためには
では、どのようなことに気をつけて炭水化物を摂取したら良いのでしょうか。
松井教授:
「腸内環境のバランスを整えるためには、“炭水化物”はとても重要です。ただ、なんでもかんでも炭水化物をとれば良いという訳ではなく、炭水化物の種類を見極める必要があります。
ポイントは、低糖質で高食物繊維な炭水化物!
食物繊維の中でも、善玉菌のエサになりやすい水溶性食物繊維が豊富な炭水化物を選ぶと尚良いでしょう。」
食物繊維が多い炭水化物といえば、さつまいもなどの芋類もあげられますが、これらは不溶性食物繊維の含有量が多いのが特徴です。水溶性食物繊維が多く、低糖質な炭水化物には、下記のような食品があります。
低糖質で高食物繊維な炭水化物
麦ごはん(押し麦、米粒麦、ビタヴァレー、もち麦など)、ライ麦パン、オートミールなど
なかでも、大麦は水溶性食物繊維の含有量がトップクラスで“腸”優秀な炭水化物。米に混ぜて食べることができるので、生活のなかに取り入れやすいのも特徴です。
スーパーやコンビニでも、大麦入りの商品(おにぎりやスープ、サラダなど)を購入することができるので、チェックしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
米や麦などの穀物類(炭水化物)も、食物繊維の供給源であることを忘れてはいけません。
腸内環境を守りながら、健康の維持・増進やダイエットを成功させるためには、上手に炭水化物と付き合うことが大切です。
安易な糖質制限は、体調や腸内環境のバランスを崩してしまう可能性があるので、“腸”賢く炭水化物を選ぶようにしましょうね。
うんち栄養士 梅原しおり
小学生の頃、気持ちよくうんちをした記憶がないくらいの便秘体質で、毎日トイレに1時間以上こもっていた。結果、トイレ好きになった。現在は、楽しい食事とストレスフリーな生活で「いいうんち、いい人生」を歩んでいる。 そのほか、ダイエットメディアの監修やアスリートの栄養指導、スポーツ栄養のコラムを執筆。 【ブログはコチラ -> http://meshi-uma.com/】
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