腸も口も健康に!口腔内細菌と腸内細菌の意外な関係とは

2018-02-13
リンク

当たり前ですが、口から食べた物は腸で消化吸収されて便として出ていきます。では、口の中にいる細菌と腸内の細菌は同じなのでしょうか。
口の中にいる細菌は口腔内細菌とよばれ、バランスが崩れると虫歯や歯周病、肺炎の原因になることがあります。最近では歯周病が、心臓病や認知症、糖尿病など全身に影響を与えることが注目されています。
今回は口腔内細菌と腸内細菌の関係に関する研究を紹介します。

連載「腸内フローラ最先端。論文を読み解き! 」

記事一覧をみる
Veles Studio /Shutterstock.com

口にも腸にもたくさんの細菌が住んでいる

腸内細菌は1人の腸内に約700-1000種類、数で見ると500-1000兆くらい存在しているといわれています。一方で、口の中(口腔内)にも約500-700種類の細菌が存在します。数で見ると、歯磨きなどの口腔ケアをきちんとできていている場合には約2000億、あまり歯磨きをしていない場合には約4000-6000億、ほとんど磨かない場合には1兆もの細菌がいると考えられています。

こう考えると口に比べて腸の方にたくさんの細菌が住んでいると思うかもしれません。
しかし、腸の表面積は畳にして約20畳分といわれており、口の中の表面積と比べると明らかに広いです。計算してみると、腸と口の中には大体同じくらいの密度で細菌が生息していることになります。

口と腸に住む細菌の違いとは

では、腸内と口腔内の細菌の種類も似ているのでしょうか。結論からいうと、腸内と口腔内の細菌の種類は異なります。
そして、口腔内の方が腸管内よりもさまざまな性質をもつ細菌が住んでいます。口は歯肉という、やわらかい場所に歯という硬いものが生えています。私たちの体の中で、そういう場所は他にありません。
このような口腔内の特徴から、歯という硬い部分に生息する細菌と歯肉というやわらかい部分に生息する細菌が存在しています。

また、歯や歯肉は空気に触れやすいので酸素のある環境で生きることのできる好気性菌、歯垢の中には酸素の有無に関係なく生きることのできる通性嫌気性菌、歯と歯肉の間には酸素が少なくても生きることのできる嫌気性菌がそれぞれ生息しています。
腸内細菌はほとんどが嫌気性菌なので、口腔内細菌とは違うことがわかります。

さらに、口腔内は1日1-1.5Lの唾液が分泌され、歯を噛み合わせる時の圧力が約80kgになることもあります。このような過酷な環境では、なにか工夫をしないと定着できません。そのため、口腔内細菌は密集して固まる力があります。腸内細菌には、そのような細菌同士で凝集する力はなく、もしあったとしたら便が出なくなって大変なことになっていたかもしれません。

口腔内細菌や腸内細菌が全身に与える影響

口腔内細菌と腸内細菌は、生息している環境が異なるので性質も違うようです。では、それぞれの細菌が全身に与える影響はどのようなものがあるのでしょうか。

まず、歯と歯肉の間に生息するような嫌気性菌は歯周病の原因になることがわかっています。最近では、歯周病が口腔内の感染に留まらず全身に影響することが知られており、歯磨きをはじめとした口腔ケアの大切さがうたわれています。
例えば、狭心症や心筋梗塞などの心臓病、脳梗塞、糖尿病などの病気の発症リスクとして歯周病が注目されています。全身の病気を引き起こすメカニズムですが、まず歯磨きをきちんとしないと口腔内細菌のバランスが崩れ、歯周病菌などの口腔内細菌が増殖します。
次に歯周病菌は歯肉から血管内へと侵入し、全身の炎症を起こします。医学的に、炎症はさまざまな病気の原因になるといわれています。

高齢者においては、歯周病が認知症や肺炎の原因になることもあります。また、妊婦さんに歯周病があると正常より体重の軽い低体重児が生まれたり、早産のリスクが高まるともいわれています。
一方で、腸内細菌に関する研究結果も数多く報告されており、腸だけでなく全身への影響が注目されています。今までウントピで扱ってきたように肥満、糖尿病、心筋梗塞、認知症、アレルギー性疾患、関節リウマチ、がんなど幅広い病気に腸内細菌の関わりがあるのではないかと考えられています。

このように口腔内細菌も腸内細菌も生息している場所だけではなく、全身へ影響を与えることが明らかになっています。また、今回挙げたように糖尿病や心臓病、認知症など共通の病気の原因になりうることがわかっています。

口腔内細菌と腸内細菌の意外な関係とは

口腔内細菌と腸内細菌は、生息する環境が違うので性質も異なるようです。
しかし、そうは言っても口と腸はつながっているので何かしら影響を与えることはないのでしょうか。単純に考えて、口腔内に歯周病があると大量の歯周病菌を飲み込んでいることになります。
1日の唾液産生量は1-1.5Lですから、1つの歯周病菌だけでも約100億も飲み込んでいることになります。

最近、口腔内細菌と腸内細菌の関連を明らかにするような研究結果がいくつか報告されています。
2014年に日本の研究チームは、マウスを使った研究で歯周病の原因となる口腔内細菌を飲ませると腸内細菌が変化することを報告しています。
また、腸内細菌が変化するだけでなく、腸のバリア機能が低下し炎症が起きることも明らかにしました。
つまり、口腔内の細菌が腸内細菌のバランスを乱す可能性があることがわかりました。

Oral pathobiont induces systemic inflammation and metabolic changes associated with alteration of gut microbiota.より引用改変

また同じく2014年に有名な科学誌である「Nature」に、肝硬変の患者の腸内細菌を解析したところ、口腔内に存在する細菌が検出されたと報告されました。
興味深いことに、口腔内細菌の比率が高ければ高いほど、病気の重症度も高いことがわかったそうです。

他にも炎症性腸疾患の患者さんの唾液中にPrevotella属の細菌が多く、炎症に関わる分子も高いことがわかっており、腸内細菌の乱れだけでなく、口腔内細菌の乱れも関連している可能性が示されています。

歯周病のある人とない人の血管の動脈硬化病変に含まれる細菌を調べると、口腔内細菌だけでなく腸内細菌も高頻度に検出されたという報告もあります。

Bacteria and bacterial DNA in atherosclerotic plaque and aneurysmal wall biopsies from patients with and without periodontitis.より引用

そして日本の研究チームによって、2017年の「Science」誌に口腔内には腸管に定着すると免疫を活性化させて、炎症を引き起こす可能性がある細菌がいることが報告されました。

このように、口腔内細菌と腸内細菌が関連して病気を引き起こす可能性がいくつかの研究から明らかになっています。
もしそうであるならば、腸内細菌のバランスを整えるだけではなく、口腔内の細菌のバランスを整える必要があります。

さいごに

口腔内と腸内は、環境が違うため生息する細菌の性質も異なることがわかりました。

しかし、生息する細菌のバランスが崩れて悪さをする菌が増殖した結果、全身の病気を引き起こす点は似ています。
また、最近の研究で報告されているように、口腔内細菌の乱れによる歯周病や腸内細菌のアンバランスによって引き起こされる全身の病気には同じものも多く含まれています。

今回紹介したように口腔内細菌が腸内細菌のバランスに影響することや、腸のバリア機能を低下させて炎症を引き起こすこともあるようです。研究結果を見ると、口腔内細菌と腸内細菌が全く無関係とは言えなさそうです。
今後さらなる研究によって、口腔内細菌と腸内細菌の関係が明らかになることが期待されます。

参考文献

http://www.jacp.net/perio/effect/

お口の中は細菌がいっぱい


https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/54/9/54_633/_pdf

1) Arimatsu K, Yamada H, Miyazawa H,et al. Oral pathobiont induces systemic inflammation and metabolic changes associated with alteration of gut microbiota. Sci Rep. 2014 May 6;4:4828. doi: 10.1038/srep04828.
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24797416)

2) Qin N, Yang F, Li A et al. Alterations of the human gut microbiome in liver cirrhosis. Nature. 2014 Sep 4;513(7516):59-64. doi: 10.1038/nature13568. Epub 2014 Jul 23.
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25079328)

3) Said HS, Suda W, Nakagome S et al. Dysbiosis of salivary microbiota in inflammatory bowel disease and its association with oral immunological biomarkers. DNA Res. 2014 Feb;21(1):15-25. doi: 10.1093/dnares/dst037. Epub 2013 Sep 7.
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24013298)

4) Armingohar Z, Jørgensen JJ, Kristoffersen AK, et al. Bacteria and bacterial DNA in atherosclerotic plaque and aneurysmal wall biopsies from patients with and without periodontitis. J Oral Microbiol. 2014 May 15;6. doi: 10.3402/jom.v6.23408. eCollection 2014.
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25006361)

5) Atarashi K, Suda W, Luo Cet al. Ectopic colonization of oral bacteria in the intestine drives TH1 cell induction and inflammation. Science. 2017 Oct 20;358(6361):359-365. doi: 10.1126/science.aan4526.
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29051379)

この著者の他の記事を読む

似た腸活キーワード

関連記事

Facebook Twitter リンク

ページトップへ戻る