下痢だけでもつらいですが、吐き気を伴うと立っているのもつらい場合があります。済生会横浜市東部病院・小児肝臓消化器科の十河剛(そごう・つよし)先生に、医療的観点から下痢と吐き気がある時の応急処置や原因についてお話をうかがいました。
下痢や吐き気の原因とは?
下痢や吐き気の原因として一番は多いのは「急性胃腸炎」です。急性胃腸炎の原因は、人から人に感染するウイルスであることが多いですね。空気感染もあるし、環境の中にあるウイルスでも感染するほか、トイレでの感染や、食べ物を介した感染もあります。
また、女性に多いのが「冷え」からくるものです。特に夏場の冷えは見逃されがちですが、冷たいものを飲んだり、エアコンで冷えたりして、消化器がやられてしまうことがあります。 さらに、女性の場合は生理前後にお腹の調子を崩す人も少なくありません。
急性胃腸炎の場合
急性胃腸炎の場合、すぐに病院へ行く必要はありません。急性胃腸炎は、薬を飲めば良いものではなく、自然治癒に任せていれば2週間以内に勝手に治る病気です。一番大事なのは、その間に“脱水にならずにどう過ごすか”。脱水にならないために「経口補水液」を使って、経口補水療法をすることが一番です。
経口補水液の摂取量は、身体の大きさにもよりますが、まだ吐き気があるうちは、5分で5cc飲んでいき、吐き気が収まってから徐々にペースアップしていくと規定量を飲むことができます。
冷えや生理が原因の場合
女の子や女性に多い「冷え」は、身体の温まる漢方や食事を摂ることで症状が軽くなる場合もあります。夏場でも腹巻きを巻いたり、お腹に使い捨てカイロを貼ったりすると、症状が楽になる患者さんもいます。
さらに、女性は月経に関連して、生理前後にお腹の調子を崩してそれが過ぎると調子が戻る方もいますね。IBSと同じように事前に調子が悪くなることが予想できていれば、ここぞという時に市販薬を処方するのはいいと思います。
病院に行くタイミングは?
下痢や吐き気の症状が2週間を超えるようであれば、医療機関で受診した方がいいです。基本的に消化器の症状は2週間を越えると「慢性」、2週間以内は「急性」と言われていて、「急性」のほとんどはウイルスなどの、感染によるものです。急性胃腸炎であれば、経口補水液で大丈夫ですが、それはあくまで短期の話。2週間から先は、それぞれの症状によって処置が異なります。
医療機関に行く際はまず、かかりつけの先生のところで診てもらった方がいいです。そこで詳しい検査が必要だということになれば、専門のところを紹介してもらうという流れになると思います。
おうちで下痢や嘔吐をしたときの適切な対処法
下痢や嘔吐で部屋などを汚してしまった場合、まずはウイルス感染が広がらない環境を作ることが大切です。下痢や嘔吐を放置していくとウイルスが舞い上がってしまうし、処理をする人も感染してしまいます。
例えば床に嘔吐した場合、吐物は思った以上に飛び散っているので、広い範囲で消毒する必要があります。見えるところは覆って、外から内にかけて処理して「キッチンハイター」のような次亜塩素酸を含むもので消毒します。最後に集めてゴミ箱へ処理するのですが、その際も全身を防護しながらおこなうようにしましょう。
下痢と吐き気を予防するなら
予防で大切なことは、手洗いやマスク、消毒をすることですね。意外と知られていないのですが、トイレを流す時は必ずふたを閉めることを徹底しましょう。トイレを流すとウイルスが舞ってしまうのですが、実はそれが20〜30分くらいも舞っているんです。トイレの周りのものにもウイルスが付着してしまうので、感染しないように注意しましょう。
まとめ
急性胃腸炎の際には、脱水対策が重要。経口補水液を飲むことが大切だと分かりました。2週間を超える「慢性」の際には、医療機関を受診しましょう。自分の症状を把握して、下痢や吐き気を治したいですね。
ライター 加藤貴大
元ファッションメディア編集記者、今はIT企業で編集者。一時期IBSに悩まされるも今は快便生活。過去に黄色いうんちをして今でも兄弟にネタにされている。いいうんちといい記事を世の中に生み出したい。