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【医師解説】子供が便秘になる原因と解消方法とは?専門家に聞いてみた

便秘は大人だけでなく子供をも悩ませる病気。大人とちがい、子供の便秘は重症化して悪循環に陥りやすいため、放置すると長引いてしまうのだそうです。そこで今回は、子供が便秘になる原因や症状、解消方法について、済生会横浜市東部病院の十河剛先生に教えてもらいました。

子供が便秘になりやすい時期と原因は?

子供には、便秘になりやすい三つの時期があります。それぞれの時期によって便秘の原因が異なるので、十分な理解が必要です。

乳児における食事の移行期

ミルクだけを飲んでいて、便の元となる食物繊維を摂取していなかった乳児が、離乳食によって形のあるうんちを出すようになるのがこの時期。しかし、乳児は自分の意志でお尻をゆるめて、いきんでうんちを出すという「協調運動」ができません。この時期に形のある固いうんちが入ってくると、うんちを上手く出せず、便秘になることがあります。

幼児におけるトイレトレーニング期

この時期には、自分での意思でお尻をゆるめてうんちを出せるようになりますが、同時に自分の意志でうんちを我慢できるようになります。したがって、「トイレトレーニングの失敗を親に怒られた」「乳児期にかたいうんちが続き、排便時に強い痛みを伴ってきた」など、何らかの理由でうんちを我慢するようになると、便秘に陥ってしまいます。

学童における通学の開始期

朝早い時間に起きて、決められた時間に学校に通学する、授業中はトイレに行けないなど、生活リズムが変わる時期です。朝はバタバタと忙しく、トイレのタイミングを逃しがち。「うんち」に対する羞恥心が生まれるのもこの時期で、友達の前でトイレに行くことに抵抗を覚える子供も少なくありません。好きなときにトイレに行けないことで、うんちを我慢してしまい、便秘になるケースがあります。

実はこんなにある「便秘を見分ける症状」

子供が便秘なのかどうか、すぐに判断する方法を知りたい方も多いと思います。実は、便秘の症状には、一見すると便秘とは関係なさそうな症状もあるため、症状だけで便秘だと判断するのは難しいのです。例えば、便秘の症状には以下のようなものがあります。

・腹痛
・裂肛(肛門痛、出血、肛門の痒みなど)
・直腸脱、痔核
・便失禁、便漏れ
・肛門周囲の便付着、皮膚びらん
・嘔吐、嘔気
・胃食道逆流、げっぷ、口臭
・集中力低下
・夜尿・遺尿

等々  

「うんちが出ない」ものと思われがちの便秘ですが、「便漏れ」も便秘の症状の一種。同じく「げっぷ」「嘔吐」なども便秘の症状とは気づきにくく、診察してから便秘だと判明することがよくあります。

実際にあった話では、「お尻がいつもかぶれている」という子供が便秘だった例があります。どういうことかと言うと、固いうんちがうまく排便できず、そのうんちの周りからうんちの汁が漏れて肛門に付着していたんです。腸液はアルカリ性で皮膚は弱酸性なので、皮膚がかぶれてしまいました。その他にも、便秘によってうんちが詰まってしまうと、体を逆流して「口臭」や「げっぷ」「嘔吐」の原因になることもあるため、一見便秘と関係ない症状が、便秘によって引き起こされた症状であることは多いのです。

うんちが正常な頻度で出ていても、便秘の可能性はある

そもそも便秘とはどのような状態なのか、正しく認識できているでしょうか。

便秘症には国際基準の「RomeⅢ診断基準」があり、以下のうち2つを満たすと便秘と診断されます。

鶴見区内の保育園・幼稚園・小学校に通う3~8歳の子供3,595人を対象に、食事と排便に関するアンケート調査を行ない、その結果をこの基準によって解析したところ、約20%の子供が便秘と判断されました。そのうち、「1週間に2回以下のトイレでの排便」に該当した子供はたったの15.9%で、一番該当者が多かったのは「痛みを伴う、あるいは硬い便通の既往」でした。

意外だと思う人もいるかもしれませんが、便秘とはうんちが出なくなることではありません。うんちが正常な頻度で出ていても、便秘の可能性はあるのです。

小児慢性機能性便秘症診療ガイドラインでは、便秘を「便が滞った、または便がでにくい状態」と定義しています。

このことから分かるように、排便回数だけにこだわっていると便秘を見逃してしまいます。分かりやすい「排便回数の低下」ではなく、「便漏れ」「嘔吐」「お尻のただれ」など分かりにくい症状のときの方が、便秘が重症化していることが多いので、病院への受診が必要です。

病院での便秘の治療とは

まずは「便塞栓」の除去から

便秘は重症化すると、便のかたまりが直腸に詰まってしまい、排便が困難になります。このかたまりを「便塞栓」と言います。

直腸は普段は閉じていて、便意を感じたときにだけ広がり、排便をします。しかし「便塞栓」が直腸に詰まると、直腸の壁が広がり、のびのびになってしまうため、便意を感じるセンサーが鈍ってしまうのです。便意を感じにくくなることで、余計にうんちがたまりやすくなりますし、うんちは腸の中にある間は脱水を続けてどんどん固くなるので、排便が困難になります。

これが便秘の悪循環に。便秘の治療ではまず、「便塞栓」があるかを調べて、ある場合は除去をしてこの悪循環を断つことを目指します。

便塞栓は、グリセリン浣腸を1日1回、3~6日間続けておこなって除去し、排便を促します。やはり子供たちは嫌がりますが、長くかかる人でも1週間くらい続けると、便塞栓は除去できます。

除去後は、正しい生活習慣を身につけることを心がける

便塞栓を除去してから、ようやくうんちが溜まらないようにする維持療法に取り組みます。

維持療法とは、以下の3つが含まれます。

・規則正しい生活習慣
・規則正しい、バランスのとれた食習慣
・規則正しい排便習慣

さらに薬物療法が加わりますが、薬はこの3つを身につけるための補助です。

便秘の人と便秘じゃない人の食事を比較したとき、唯一ちがいがあったのが「100カロリーあたりの脂質が占める割合」でした。それ以外は、食物繊維も水、乳製品の量は関係なかったんです。つまり油のとりすぎはバランスが良くないということ。実際の年齢相当のバランスのいい食事を心がけましょう。

3つの習慣について考える上のポイントは、どれか一つではなく、すべてを整えるということです。規則正しい3つの習慣を身に着けることで、鈍っていた排便のセンサーも戻っていきます。

ちなみに、お子さんが便秘だと、「できるだけ水を飲ませること」を意識しているという保護者の方も多いかもしれません。確かに、脱水症状がある状態だとうんちは固くなります。たくさん汗をかく夏場や、意外に脱水になる冬場などは、水分をとる必要があるでしょう。

ここで注意が必要なのが、ただ普通に水を飲んでも、そのときに必要な水分量を超えると、超えた分はおしっこで出てしまうということ。経口水液など塩分が含まれているものの方が体の水分を保持します。ただ水を飲むことばかりにとらわれるのではなく、味噌汁など、食事に含まれる水分量を増やすことを意識してみましょう。

薬は、あくまで3つの習慣を身に着けるための補助

「便秘薬や浣腸を使用することで便秘が癖になるのではないか」と心配される保護者の方も少なくありません。しかし、薬や浣腸は規則正しい習慣を身に着けるための補助です。つまり、薬だけ飲んでいても、生活習慣、食習慣、排便習慣が改善されなければ、薬をやめることはできない、言い換えると、薬をやめるためには生活習慣、食習慣、排便習慣が改善する必要があるということです。「怖い」「癖になる」ということはあまり考えずに、「規則正しい習慣を身に着けて、早く薬を卒業する」という風に考えるとよいでしょう。

便秘になりやすい時期に合わせた、便秘の予防方法

子供の場合、成長によって便秘になりやすい時期がおとずれます。その際に便秘にならないように意識すべきことをまとめてみました。

乳児における食事の移行期に意識すること

この時期は、うんちをゆるくすることが大切。子供がうんちが固くて出しにくそうにしていたら、 薬を使って、本人が苦にならないうんちの出し方に変えてあげた方がいいです。この時期に、うんちが固くて3日も4日も出ない状況を作ってしまうと、そこから便秘に移行してしまいます。

幼児におけるトイレトレーニング期に意識すること

うんちを我慢させないことが大事なので、トイレの習慣づけが重要。また、外遊びをしっかりさせて体幹の筋肉をつけると、うんちをするときに「いきむ力」がつき、便秘予防につながります。

学童における通学の開始期に意識すること

この時期になったら、とにかく規則正しい生活を意識。キーワードは、「早寝早起き朝うんち」です。

まとめ

「正常な排便回数でも便秘の人がいる」「一見すると便秘とは関係ないような症状がある」など、便秘をめぐる誤解が判明した取材となりました。本文中にもあるように、症状だけで便秘だと自己判断するのは難しいため、便秘と関係ないような症状でも油断はできません。早めの受診を心がけましょう。また、子どもが便秘になりやすい時期に合わせて適切な対応をすることは、便秘の予防に効果的に働きます。ぜひ参考にしてみてくださいね。

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