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【発酵な人vol.4:小野澤浩行さん】オール新潟でつくるこだわりの日本酒!地元で愛される老舗酒蔵が目指す未来

発酵にまつわる商品やサービスに関わる人たちにフォーカスしてお話をうかがう連載「発酵な人」。今回の「発酵な人」は、新潟県内で最も古い酒蔵「吉乃川」の小野澤浩行さんに、こだわりの酒づくりや麹あまざけ「朝麹」についてお話をおうかがいしました。

いつでも飲める美味しいお酒

今回は、小野澤さんが「ウンログくんかぶりたい!」ということで、全編をウンログくんon小野澤さんでお送りします(笑)。
ナガセ:
先日、「極上吉乃川」を飲ませていただきましたが、飽きがこなくて美味しかったです!どんなこだわりがあるお酒なんでしょうか。

小野澤さん:
ありがとうございます!「極上吉乃川」は、新潟県産の五百万石を使ったキレのあるスッキリとした飲みやすいタイプの吟醸酒です。発売してから30年経つ商品ですが、地元の方からお酒が好きな方まで広く愛されている商品ですね。

ナガセ:
あのラベルが格好いいですよね。

小野澤さん:
ラベルの文字は、毎年「今年の漢字」を書いている清水寺の森清範貫主のものなんです。吉乃川の創業である川上家が清水寺にゆかりがあったので書いてもらったんですよ。

ナガセ:
そうなんですね!他にも「厳選辛口吉乃川」や「みなも」といった商品も出されてますが、それぞれどんなお酒なんでしょうか?

小野澤さん:
「厳選辛口吉乃川」は、新潟の居酒屋で「お酒ちょうだい」というと出てくる晩酌酒です。「極上吉乃川」と同様に30年以上みなさんにご愛顧いただいています。「みなも」は、量は飲まないけど質の良いものを飲みたい、という現代のニーズに合わせた商品ですね。

吉乃川の商品は「いつでも飲める美味しいお酒」というのを目指しているので、どれも比較的飲みやすく、NOと言われることがあまりないんですよ。

ナガセ:
海外の鑑評会でも最高位の賞を受賞されてましたよね。

小野澤さん:
そうなんです。受賞したのは「酒蔵の淡雪」というスパークリング日本酒なんですが、定番の日本酒造りも大切だけど新しいことも仕掛けていかないといけないということで5年の歳月をかけて開発しました。これがフランスの「KURA MASTER」という鑑評会で最高位になるプラチナ賞と審査員特別賞を受賞しています。

ナガセ:
ご…5年ですか。たくさんの苦労があったかと思うのですが、一番大変だったことはなんでしょうか?

小野澤さん:
味を決めるのにかなり苦労しました。スパークリングにも瓶の中で微生物の力で発泡させてから発酵を止めて出荷する商品と、ガスを後から添加する商品と2種類があって、「酒蔵の淡雪」は後から添加する発泡酒です。なので、炭酸を添加してみないと最終的な味がわからないんですよ。炭酸飲料の炭酸が抜けるとべっとりと甘い感じになってしまうように、お酒も炭酸のあるなしで味が変わってしまうんです。バランスやガスの付け方にはかなり苦労しました。

米どころだからこそできる”オール新潟”の酒づくり

ナガセ:
吉乃川さんは創業何年の酒蔵なんでしょうか?

小野澤さん: 創業1548年なので、戦国時代から続いています。

ナガセ:
戦国時代!想像もつかない昔ですね。

小野澤さん:
新潟県は酒蔵が88件あり、全国で最も酒蔵が多い県ですが、その中でも吉乃川は1番古いんです。規模でいうと、県内で5〜6番目の生産量ですね。

ナガセ:
新潟で酒造りが盛んなのには何か理由があるんでしょうか?

小野澤さん:
米どころというのが1番のポイントです。夏場は稲作をして、冬の農閑期は出稼ぎをして酒を造るという産業の循環がしやすかったのだと思います。出稼ぎにいった人々を「越後杜氏」と呼びますが、その中から造り酒屋がいくつも誕生して、新潟には小規模から大規模までたくさんの蔵元が誕生しました。

ナガセ:
循環しやすさという地の利は大切ですね。吉乃川さんも新潟の原料だけをこだわっていますが、地元の原料を使う酒蔵さんは多いのでしょうか。

小野澤さん:
吉乃川のお酒は、酒米は新潟のお米だけ、仕込み水は信濃川の伏流水と蔵の井戸から沸く裏山の雪解け水を使っているので、すべて新潟産のもので作られています。

地元の原料にこだわる酒蔵は、新潟は比較的多いかもしれないですね。全国で見ると、酒米を作っていない県もあるので、他県から買っているところも少なくないです。例えば、一般的に鑑評会に出す出品酒は兵庫産の山田錦を使う蔵がとても多いんです。作りたい酒の味に合わせて酒米を選ぶというのが主流ですね。

ナガセ:
吉乃川さんは出品酒も新潟県産の酒米を使っていますよね。

小野澤さん:
吉乃川では新潟で作られる「越淡麗」という酒米を使っています。ありがたいことに、国税局主催の全国新酒鑑評会でも新潟県で1番多く賞をいただいているんですよ。

飲むなら朝!に特化した麹あまざけ「朝麹」

ナガセ:
腸活の観点では、やはり甘酒に注目してしまうのですが…(笑)。私も「朝麹」飲ませていただきましたが、そのまま飲めるから手軽だし、味も甘すぎずにすっきりとしていてとても飲みやすかったです。

小野澤さん:
もともとはパウチで希釈するタイプの甘酒を製造していたんですが、手軽に飲める商品ができないか、ということで商品づくりが始まりました。

ナガセ:
よくぞ気づいてくださいました…!!!希釈するタイプだとなかなか続かないんですよ。

小野澤さん:
そうなんですよね。

ナガセ:
「朝麹」という商品名なので、朝飲むものというイメージなのですが、狙いがあるんですか?

小野澤さん:
企画する中で飲むタイミングをいろいろと考えてみたのですが、朝飲むのが1番いい!という結論から今の形になりました。

ナガセ:
朝に甘酒を飲むとどんなことが良いんでしょうか?

小野澤さん:
寝ている間に、体内の糖は消費されてしまいます。体を起こすためには、ブドウ糖とミネラルを摂取する必要がありますが、麹の甘酒にはどちらも含まれているんです。さらに、すりつぶしてあるので口当たりがサラサラとしていて朝忙しい時間でも飲みやすいんです。「朝麹」でスタートダッシュを切って欲しいですね。

ナガセ:
忙しい人のためのエナジードリンクですね!

小野澤さん:
朝忙しい人にはもちろんですが、起き抜けにぐずる赤ちゃんや夜型になってしまっている受験生にも飲んで欲しいんです。ブドウ糖をチャージしてシャキッと目覚めて欲しいですね。

もろみの泡を見て発酵にハマった!

ナガセ:
小野澤さんはどうして発酵の魅力にハマっていったんですか?

小野澤さん:
中学生のときに社会科の授業で、新潟は酒づくりが盛んだけど今後担い手が不足します、というのを学んだんです。それがきっかけで酒づくりに興味を持って当時県内で唯一醸造科のあった高校に入学しました。入学後は、パン、味噌、漬物とさまざまな発酵食品をつくる実習があったんですが、中でも高校2年生のときの「清酒製造実習」が今の仕事に繋がっています。

自分たちの仕込んだもろみからクリーム色の泡が膨らんで破れてを繰り返しているのを見て、「生きてるんだ」と衝撃を受けたんです。それがきっかけで発酵にハマってしまって、高校生で醸すという字をこれだけ書いたのは自分だけだろうなというくらい勉強しました(笑)。

ナガセ:
人生を変える出会いだったんですね。大学に進学されたあとも清酒について学んでいたんでしょうか。

小野澤さん:
大学では酒米の研究をしていました。当時、学内には酒米について研究している人がいなくて、大学に何かしら残したいと思って勉強していました。今みたいにインターネットもなかったので文献を調べたりしていましたね。

今では「日本酒学」なんていう講座もできていて、昔と違って注目されてるんだなあと思います。

飲む人と作る人の関係を醸す場所づくり

ナガセ:
吉乃川さんの今後の展望を教えてください。

小野澤さん:
2019年10月に「醸蔵」という観光施設をオープンしました。今後はここを飲む人と作る人との接点にして、吉乃川の発信基地に育てていきたいと思っています。吉乃川にはありがたいことにたくさんのファンの方がいてくれるので、ファンのみなさんと吉乃川の社員が実際に語り合いながら関係を醸していく場所にしていきたいですね。

ナガセ:
とても素敵ですね!私も行ってみたいです!

お酒づくりは発酵文化の最高峰

ナガセ:
小野澤さんは今後どんな風に発酵と関わっていきたいですか?

小野澤さん:
僕個人では、年に一回味噌を仕込んで、たまにパンを焼いて、とゆるく発酵と関わっていきたいと思っています。

発酵文化はそれぞれの国や菌によって作られていますが、日本のすごいところはやはり麹。初めは科学的なことなんて全くわからずに作られていたと思うんですが、先人の知恵が今でも引き継がれていて和食という日本特有の文化の根底に残っているところがすごいと思います。特に清酒の醸造は発酵の最高峰です。温度管理やタンクの中の菌のバランスなど全ての条件が揃わないと完成しません。昔の人はよくこの方法を編み出したなと思います。

吉乃川ではたくさんの人に日本酒の魅力を伝えていきたいですね。

まとめ

新潟からわざわざ東京までいらしてくださった小野澤さん。とても気さくで笑顔が絶えないお人柄で、終始和やかな雰囲気でお話させていただきました。小野澤さんのような方々がつくっているお酒だからこそ長く愛される商品がたくさんあるのだと思いました。

スパークリング日本酒の「酒蔵の淡雪」も飲ませていただきましたが、やさしい甘みがあり女性にも人気が出そうなお酒でした。都内ではまだお目にかかる機会が少ないですが、ぜひ飲める場所が増えて欲しいです。

吉乃川さんの商品はこちらをチェック!
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