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人工甘味料は腸内細菌を変化させ、血糖値が下がりにくくなる

飲み物からなるべく糖分を摂りたくない人は、人工甘味料を強い味方に感じているかもしれません。人工甘味料にダイエット効果があるかは、まだ賛否両論です。一方で、人工甘味料が腸内細菌に変化を与えるせいで血糖値が下がりにくくなるのではないかという研究結果が注目を集めています。今回は、今までの人工甘味料に関する研究結果と人工甘味料が腸内細菌に与える影響に関する研究を紹介します。

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飲み物からなるべく糖分を摂りたくない人は、人工甘味料を強い味方に感じているかもしれません。人工甘味料にダイエット効果があるかは、まだ賛否両論です。一方で、人工甘味料が腸内細菌に変化を与えるせいで血糖値が下がりにくくなるのではないかという研究結果が注目を集めています。今回は、今までの人工甘味料に関する研究結果と人工甘味料が腸内細菌に与える影響に関する研究を紹介します。

人工甘味料がダイエットに効果的かは分からない

人工甘味料は、サッカリンやスクラロース、アスパルテームなどのことで、砂糖の代わりに摂ることでカロリー摂取を防げる効果を期待されています。サッカリンは砂糖の約500倍、スクラロースは約600倍、アスパルテームは薬200倍の甘さを感じるといわれています。人工甘味料は体の中で分解や吸収をされないため、カロリーは摂らないので太らないと考えられてきました。 実際にアメリカの研究チームが2014年4月に「American Journal of Clinical Nutrition」誌に発表した報告では、人工甘味料と体重やウエストサイズなどに関する今までの論文を比較したところ、低カロリーの人工甘味料を摂っている方が体重を減らす傾向があることがわかりました。具体的には、体重800g減少、BMI0.24減少、脂肪量1.1kg減少程度なので、統計学的に意味がある差だったとしても実際には大きな差とはいえないかもしれません。 一方で、人工甘味料は体や環境への悪影響があるという報告もいくつかあります。人工甘味料は砂糖よりも甘く、味覚を狂わせ、依存性もあるため常に甘いものを欲するようになり逆に太る、糖尿病になりやすくなる、体内で分解されないのでそのまま排泄されて環境破壊になる、などです。 アメリカの研究チームは、ダイエット炭酸飲料を飲むほどかえって肥満になるという衝撃的な結果を2015年4月に「Journal of the American Geriatrics Society」誌に報告しました。アメリカ人749人に対しダイエット炭酸飲料の消費量とその影響を約9年間にわたり追跡したそうです。ダイエット炭酸飲料を飲まない人はウエストサイズが平均0.77cm増えたことに対し、ダイエット炭酸飲料を飲む人は平均約2.11cm増えていました。また、驚くことに時々飲む人は約1.76cm、毎日飲む人は約3.04cmのウエスト増加でした。つまり、人工甘味料が含まれるダイエット炭酸飲料を飲めば飲むほど肥満になっていることがわかりました。 紹介した2つの論文からわかるように人工甘味料がヒトの体に与える影響は、まだ賛否両論で結論が出ているとは言い難い状況です。では、なぜ人工甘味料が肥満や糖尿病を誘発するのでしょうか。学術的に有力な科学誌である「Nature」に発表された腸内細菌と人工甘味料の関連に対する報告について紹介します。

人工甘味料は腸内細菌を変化させ、血糖値が下がりにくくなる

イスラエルの研究チームは、2014年10月に人工甘味料であるサッカリンを摂取すると腸内細菌のバランスが変わり血糖値が下がりにくくなることを「Nature」誌に報告しました。 研究チームは、糖代謝への直接的な影響ではなく、腸内細菌のバランスが変化したことによる効果であることも明らかにしました。全く細菌をもたないマウスの腸に、人工甘味料を摂っているマウスの便を移植すると血糖値への反応が悪く、下がりにくくなる現象が見られました。血糖値への反応が悪い現象は、耐糖能異常と医学的にはよばれており、糖尿病予備軍や糖尿病患者に見られることがあります。 また、7人のヒトを対象とした実験では、人工甘味料を常用していると血糖値が軽度上昇することも確認しました。 今回の研究は、人工甘味料と腸内細菌の関係に着目し、血糖値が下がりにくくなる現象を説明した点で画期的でした。しかし、各国の専門家からは批判もありました。以下のような批判です。
  • 全ての人工甘味料ではなく、サッカリンのみで今回の結果が得られたこと
  • ヒトに対する実験は7名のみで小規模
  • 米国食品医薬品局(FDA)が定める1日あたりの摂取量の上限に相当する甘味料を5日間与えたとなっているが、コーラであれば1日40缶飲むことになる
  • 人間は人工甘味料だけでなく、肉や野菜、ケーキなどを食べる雑食生物なので、無菌マウスの結果をヒトに当てはめるのはやや強引ではないか
  • 実験に用いられたマウスは、甘味料を溶かした水以外を与えられていない
各専門家の批判を見ると、まだ結論を出すには不十分なデータといえるかもしれませんが、今回の研究は1つの新しい知見を提示したということで有意義と考えられます。

さいごに

人工甘味料の体に対する影響についてまとめた報告と人工甘味料が腸内細菌のバランスを変化させて血糖値を下げにくくするという報告を紹介しました。人工甘味料が腸内細菌のバランスを変化させ、血糖値が上昇しやすくなることを証明できたことは興味深いですが、人工甘味料の中でもサッカリンのみであったこと、実験で摂取した人工甘味料が大量であること、マウスでの研究結果をヒトに当てはめてよいのか疑問が残ること、など研究の限界を感じます。 少なくとも、人工甘味料は摂るとしてもほどほどに、食事は全体のカロリーを考えてバランスよく摂ることが糖尿病や肥満の予防に大切ということはいえます。

参考文献

1) Miller PE; Perez V.Low-calorie sweeteners and body weight and composition: a meta-analysis of randomized controlled trials and prospective cohort studies.Am J Clin Nutr. 2014;100:765-77. doi: 10.3945/ajcn.113.082826. Epub 2014 Jun 18.
(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24944060)
2) Fowler SP ; Williams K; Hazuda HP. Diet Soda Intake Is Associated with Long-Term Increases in Waist Circumference in a Biethnic Cohort of Older Adults: The San Antonio Longitudinal Study of Aging. Am Geriatr Soc. 2015 Apr;63(4):708-15. doi: 10.1111/jgs.13376. Epub 2015 Mar 17. (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25780952)
3) Suez J; Korem T; Zeevi D et al.Artificial sweeteners induce glucose intolerance by altering the gut microbiota.Nature. 2014 Oct 9;514(7521):181-6. doi: 10.1038/nature13793. Epub 2014 Sep 17.
(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25231862)

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