いまや健康を保つ選択肢の一つに数えられる腸活。しかし、腸活とは本来何を目標とする行為なのでしょうか。ここでは腸活のキホンについておさらいしてみましょう。免疫学の権威として腸のご研究をされている藤田紘一郎先生に、「腸活」についてお伺いしました。
藤田紘一郎先生による「腸活とは?」
毎日の快便のため、ダイエットのため、アレルギー緩和のため…腸活をする理由はさまざまだと思いますが、腸活の本当の目的とは何なのでしょうか。まずは藤田先生に、腸活のキホンについて聞いてみました。
うんちだけではない!重要な”腸のはたらき”
腸活の目的とは、腸の活性化を誘導すること。腸内にある腸内細菌と腸粘膜は、人々の健康に欠かせない重要な役割を担っているんです。
まず腸が健康であれば、体内に入ってきた病原体をすぐに追い出すことができます。
腸粘膜には、ここでしか合成できない2つの物質があります。一つは身体をつくるビタミンB群やビタミンK群などの栄養素。もう一つは幸せ物質と呼ばれているドーパミンやセロトニンで、心の安定を図るうえで非常に重要な物質です。
そして、健康な生活をするために不可欠な免疫力の70%は、腸でつくられています。腸には2つの免疫細胞があり、体の免疫力を上げたり下げたりするのも腸にかかっています。免疫力が上がると、ガン予防やアレルギーの抑制、うつ病など心の病を改善してくれる効果も期待できます。これらの病気の予防解決策の一つとして、腸活はとても有効なんです。
身体に起こる3つの変化が腸活結果
腸活がスムーズに進むと、まず「便通」がよくなります。便秘も解消されることでしょう。次に変化するのは「肌」。肌荒れや吹き出物、乾燥肌などが改善されて、肌の状態がよくなります。
私も医学部の教授をしていた頃に、腸内環境が悪い時期がありました。ストレスを感じることが多く、腸内の善玉菌や日和見菌が大幅に減少していました。免疫も落ちていましたね。当時55歳だったのですが、肌年齢は64歳。私はそれから20年弱に渡り腸活を続けたことで、73歳で肌年齢62歳まで挽回しました。
腸活では、最後に「性格」の変化を感じましたね。それまで常にイライラしていたのがすっと消え、非常に明るい性格に変わりました。幸せ物質がたくさん分泌されているのでしょう。免疫力が上がるので、風邪を引きにくくなったり、ガンも抑制してくれていると思います。アレルギーもすっかり治って、心と体がどんどん健康になっていきました。
効果的な腸活の方法とは?
藤田先生が腸活をするうえで重きを置く「食物繊維」と「発酵食品」。食物繊維は”痩せ菌”を増やすこともできるそうですが、腸活とどのような関係があるのでしょうか。
善玉菌を優位にする「食物繊維」と「発酵食品」
効果的な腸活をするには、善玉菌を優位にして日和見菌を増やすことが重要です。優位にするには、善玉菌が好きな「植物性のえさ」を摂ることです。とくにおすすめは、便のかさを増やしたり柔らかくして快便へと導く「食物繊維」。ビタミンB群が豊富な「発酵食品」もいいですね。ビタミンの旺盛を促進して肌ツヤがよくなり、腰痛なども緩和されますよ。
”痩せ菌”を増やす「酢キャベツ」
腸活をするうえで注意したいのが、重度の肥満です。太り過ぎは腸の活動を鈍らせるので、少し痩せているくらいがベストです。日和見菌にある”痩せ菌”という細菌を増やすと、痩せやすく、太りにくくなります。
痩せ菌を増やす方法の一つとして、私がおすすめしているのは「酢キャベツ」です。毎食前に100g食べ続けると、1〜2週間ほどで身体に変化が訪れます。
「酢キャベツ」について詳しく知りたい方は 「酢キャベツはダイエット・腸活にも効果がある!? 1週間実践してみた」をご参照ください。
食物繊維の豊富なキャベツに酢を加えたものを善玉菌が食べると、腸内で短鎖脂肪酸がつくられます。短鎖脂肪酸というのはお酢の主成分である酢酸や、乳製品に含まれる酪酸。腸内で短鎖脂肪酸をつくると、痩せ菌がどんどん増えるんです。
腸活がうまくいかない原因と解決策
さまざまな腸活を試してみても、なかなか結果が出ないことがあります。その原因は生活習慣にあるのかもしれません。
生活習慣病の一因となる活性酸素
腸にもっとも悪影響を与えるのは「活性酸素」です。呼吸で取り込んだ酸素が何らかの刺激によって活性酸素に変化してしまうと、老化やガンなどの生活習慣病の一因になります。主な刺激として考えられるのは、携帯電話やパソコン、電車の改札で使うICカードなどの電磁波や、食品添加物、ストレス。これらの刺激は、現代社会に生きていると、どうしても避けることが難しいですよね。
活性酸素を除去する2つの方法
避けることが難しいのであれば、体内から除去する方法を考えてみましょう。活性酸素の除去に有効なのは、植物に含まれているフィトケミカル、いわゆる抗酸化物質です。「緑黄色野菜」やぶどうやプルーンの紫の色素である「ポリフェノール」に多く含まれているので、食生活に意識して取り入れましょう。
また、活性酸素の除去にもっともおすすめなのは「適度な運動」です。活性酸素の除去にはもちろん、リフレッシュやストレス解消にも効果的です。運動で腸が刺激され、腸内環境も整えることができます。
我々は本来活性酸素を除去する力を持っているんですが、老化とともにその力も衰えます。そこで軽い運動をすることで、活性酸素を除去する力を補うことができるんです。
“適度’が大切ですので、ご高齢者の激しい運動は控えてください。決して無理のない運動を習慣にしていきましょう。
まとめ
なにげなく生活している今も、腸は病原体と戦っていたり、幸せ物質を分泌してくれています。腸を労る生活を意識することで、心身の健康を目指しましょう。ウントピ!で自分に合うものを探して、無理のない腸活を続けてくださいね。
ライター コバヤシマユコ
手作りの発酵食品とヨガで腸活をするフリーライター。息子のアレルギー改善策としてはじめたのがきっかけの腸活ですが、今ではすっかり生活の一部になっています。
便秘よりも下痢になりやすい体質。下痢になったら米麹の甘酒を飲んで、腸を整えています。
医師・医学博士・東京医科歯科大学名誉教授 藤田紘一郎
1939年旧満州(現中国領)生まれ。三重県育ち。
寄生虫学、感染免疫学、熱帯医学を専門とする医学博士。寄生虫博士として広く一般に知られており、15年間自身の腸内でも寄生虫(サナダムシ)を飼っていた。花粉症の原因の一つに寄生虫の撲滅が関係するという自説が持ち、アレルギーや腸に関する著書も出版している。『アレルギーに負けない体は「腸」がつくる 毎日の食べ方・暮らし方をどう変えるか』(実務教育出版)『子どもをアレルギーから守る本』(だいわ文庫)『アレルギーの9割は腸で治る! クスリに頼らない免疫力のつくり方』(大和書房)『腸内フローラ 医者いらずの驚異の力』(宝島社)など多数。