手軽なダイエット法として糖質=炭水化物を制限する方法が話題となっていますが、実は、これは気とつけないと下痢や便秘を引き起こすもとになってしまうことがあるんです。
しかし、どうして糖質=炭水化物を制限すると、下痢や便秘になってしまうのでしょうか?
炭水化物抜きダイエットについての注意点をご紹介しましょう。
糖質、つまり炭水化物を制限することでほんとに痩せる?
ダイエットの基本は、消費エネルギー>摂取エネルギーにすることであるため、細胞のエネルギー源となる糖質を制限することは、その分脂肪の燃焼を促進させるため、ダイエット効果はあるのかもしれません。
摂取した糖質がブドウ糖に分解され、消化管から吸収されて、血液中のブドウ糖の量(血糖値)が上昇すると、血糖値を下げるためにすい臓からインスリンというホルモンが分泌されます。
インスリンには、全身の細胞にブドウ糖を取り込ませ、エネルギーとして利用できるようにする働きや肝臓や筋肉でブドウ糖からグリコーゲンという貯蔵糖が作られるのを促す働き、グリコーゲンが分解されるのを抑える働きがあります。
さらに、余った血糖を脂肪細胞に取り込んで、脂肪として蓄えたり、脂肪の分解を抑える働きもあります。
そのため、糖質を摂りすぎると、体脂肪が増えることになります。
糖質制限ダイエットは、食後の血糖値の急激な上昇を抑えることによって、インスリンの分泌を抑え、結果として脂肪を貯める働きを抑える効果もあります。
このように、理論的には糖質を制限することで、痩せることが期待できますが、その分、肉や脂肪分を摂ってしまったら、かえって逆効果となることも。
下痢、便秘・・・低炭水化物ダイエットの落とし穴
しかし、なぜ、糖質の摂取を制限すると下痢や便秘になりやすくなるのでしょうか?
これは、糖質を極端に減らし、その分、肉や魚などのたんぱく質や脂質の摂取が多くなると、腸内細菌のバランスが崩れ、悪玉菌優勢になってしまうことが原因です。
悪玉菌優勢になってしまうと、腸の働きが低下してしまい、下痢や便秘を引き起こします。
腸内細菌のバランスが崩れてしまうということは、下痢、便秘を引き起こすだけでなく、体に不調を来たす恐れもあります。
ダイエットをして体重は減ったけれど、不健康になったでは意味がありませんね。
カギを握るのは食物繊維から産生される「短鎖脂肪酸」
そこで、積極的に摂りたいのが食物繊維です。
中でも、水溶性食物繊維が腸内の善玉菌に分解されて、産生される「短鎖脂肪酸」がとっても重要な働きをします。
脂肪酸とは、油脂を構成する成分のひとつで、炭素という元素がいくつも鎖のようにつながった構造をしています。
そのうちの鎖のようにつながった炭素の数が6個以下のものを短鎖脂肪酸といいます。
腸内細菌が水溶性食物繊維を分解して作り出す、酢酸、プロピオン酸、酪酸が短鎖脂肪酸に含まれます。
短鎖脂肪酸は、大腸から体内に吸収され、大腸上皮細胞の増殖や、水分やナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルを吸収するためのエネルギー源となります。
水分やミネラルの吸収がスムーズになると下痢の改善につながります。
そして、全身にも運ばれて、脳や肝臓、筋肉、腎臓などのエネルギー源や脂肪を作る要素にもなります。
そのため、糖質を制限して細胞のエネルギー源であるブドウ糖が不足しても代わりに短鎖脂肪酸がエネルギー源になります。
さらに、短鎖脂肪酸は、腸内を弱酸性に保ち、腸を刺激して蠕動運動を促し、悪玉菌の増殖を抑え、便通を改善します。
その他、炎症を抑える、免疫反応をコントロールするなどさまざまな働きがあります。
また、短鎖脂肪酸は、脂肪細胞へ脂肪が取り込まれるのを抑え、肥満を予防する働きや、神経細胞に働きかけ、エネルギー消費のバランスを整える働きもあるといわれています。 ダイエット効果もあるわけですね。
糖質制限だけでなく栄養バランスを考えた食生活を
糖質制限だけを行った場合、体重は減少するかもしれませんが、その代償として、下痢や便秘で苦しむのは健康的ではないですね。
糖質制限ダイエットを行う際は、短鎖脂肪酸の助けを借りるため、しっかり水溶性食物繊維を摂ることは必須ですね。
しかし、糖質、たんぱく質、脂質、食物繊維、ビタミン、ミネラルは、健康を維持するために、どれも大切な栄養素です。
ダイエットの際も、栄養バランスを考えた食生活を送ることが、一番です。
これが、健康的に痩せる秘訣ではないでしょうか。
さいごに
炭水化物を制限するダイエットについては、賛否両論があるようですが、何事にもいえることですが、あまりに極端な糖質制限は、健康を害する可能性も秘めていますので、控える方が良いのではないでしょうか。
また、ヒトにとって、さまざまな有益な作用がある短鎖脂肪酸を産生する腸内細菌を育てるためにも、栄養バランスの良い食事を摂ることは大事ですね。