手足の冷えで悩む女性は多いですが、実は腸も冷えるってご存じでしたか?冷えた腸は活発に働いてくれないため、美容やダイエットの大敵に。では腸を温める「腸温活」のためには、どんな生活習慣を取り入れればいいのか、専門家のイシハラクリニック副院長の石原新菜先生にお話をうかがいました。
こんな人は要注意!腸を冷やす生活習慣
手足が冷たくなる末端の冷え性は、自覚症状を持っている方も多いのではないでしょうか。でも腸が冷えてることを自覚している方は少ないと思います。まずは、どんな生活を送っている方が要注意なのか、石原先生にうかがいました。
クーラー・薄着・冷たい飲み物で現代人は冷えバテしている
昔は夏の暑さによる「夏バテ」で体調を崩す方が多くいました。しかし、現代はどこにいっても冷房がきいており、薄着をする方も増えています。暑いときには、冷たい飲み物を気軽に飲むことができるようになったため、腸が冷えてしまう方が急増しているのです。 そのため、室内に長時間いる方、薄着をする方、冷たい飲み物・食べ物をよく口にする方は気をつけてください。胃もたれ、食欲不振、胃痛、便秘、下痢などの症状がある方は「夏バテ」ではなく、腸が「冷えバテ」している可能性が高いです。「夏が旬」「南の地方で採れる」野菜には要注意
口にするのに気をつけるのは、冷たい飲み物だけではありません。実は、夏が旬だったり、南の暑い地域が特産の野菜にも、身体を冷やす効果があるのです。昔はクーラーもなかったので、夏にそれらの野菜を食べるくらいが、ちょうどよかったのですね。 例えば健康にいいと思って、生野菜のサラダやグリーンスムージーをとっている方もいますよね。確かに、栄養はとれるのですが、代わりに腸を冷やす効果があるので注意が必要。夏野菜を食べるのであれば、汁物にしたり煮込んだりと調理方法を工夫しましょう。水の飲み過ぎも身体を冷やす
意外と盲点なのが、水の飲み過ぎでも腸を冷やしてしまうということ。水は熱の伝導率が高いので、腸の熱を下げてしまう効果があるのです。これは常温の水や白湯の場合でも、同様です。 『健康のために1日に2Lの水を飲むといい』と言われていますが、そんなことはありません。人によって新陳代謝が違えば、汗の量も違います。過ごす場所の気温も湿度も違うのに、みんなが必要とする水の量が同じなわけがありませんよね。水を飲むときは、量を意識して飲むのではなく、喉が乾いたら必要な分だけ飲むことをおすすめします。腸温活のメリット!腸を温めると全身が元気に
腸は冷えることで、様々なトラブルを引き起こしますが、逆に温めることで全身の免疫力を高めることもできます。それは、免疫力を司るリンパ球の約70%が腸にいるからです。腸の壁にはパイエル板というリンパ節があり、そこから大量のリンパ球を出してくれています。
腸を温めることで、血流が良くなり、リンパ球を出す働きも活発になります。腸は、口から侵入した有害なものから身体を守ってくれる器官です。そのため、腸を温めて活発化させることは、全身の免疫力を高めることに繋がるのです。
腸を温める食生活
「腸を温めることで身体が元気になる」と石原先生は言います。では具体的に何をすれば、腸を温めることができるのでしょうか。まずは食生活についてうかがいます。
食事のポイントは薬味
腸を温めるためには、温かい食べ物を口にするのが効果的ですが、その際に薬味を加えると尚良いです。生姜やねぎ、ミョウガなど、薬味と呼ばれるものをたっぷりかけましょう。薬味のほかには、スパイスもおすすめです。 身体を冷やす食べ物を口にする時も、薬味やスパイスをうまく活用することで、腸の冷えを防ぐことができます。たとえば、身体を冷やす飲み物であるコーヒーも、シナモンと一緒に飲むことで腸を温めることができます。白湯を飲む場合も、ショウガ湯などにするといいですね。味噌汁は腸のスーパーフード
腸を温めるのに一番良い食事は、味噌汁です。蛋白質がアミノ酸の状態で入っていますし、ミネラルも豊富です。具材はお気に入りのものでいいですが、腸を温めるのであれば七味をかけて召し上がると効果的ですね。 できれば一日2杯を飲むと、味噌汁の効果が高まります。味噌汁の塩分を気にする方がいますが、味噌汁の塩分は血圧が上がりづらいという実験結果が出ています。また、塩分も身体を温める効果があり、血圧を上げずに塩分がとれる味噌汁は、腸温活に最適な食べ物と言えます。自宅で気軽に飲める梅醤番茶
昔から冷え性に良いと言われる『梅醤番茶』(うめしょうばんちゃ)は、腸を温めるのにもおすすめ。すりつぶした梅と、大さじ一杯の醤油を番茶で割った飲み物です。お好みですりおろした生姜を入れてもいいでしょう。市販もされていますが、自宅でも簡単に作れるので、腸の調子が良くない時はぜひ召し上がってください。腸を温める生活習慣
食生活以外にも、日々の生活で腸を温める方法を教えてもらいました。
40度で15分の入浴
冬にお風呂に浸かる方は多いですが、腸が冷えやすい夏こそお風呂に入って欲しいですね。よくぬるま湯に長時間浸かるのが良いという話を聞きますが、腸が冷えている方がぬるま湯に浸かっても意味がありません。汗がかけるくらいの温度のお湯に、全身で浸かってください。 40度のお湯に15分浸かると、深部体温が0.5度上がるというデータも出ています。腸が冷えている方は、40度以上のお風呂をぜひ試してみてください。夏こそ腹巻きがおすすめ
みなさんにおすすめしているのは腹巻きですね。腹巻きというと冬のイメージがありますが、腸が冷えやすい夏こそ腹巻きをしてほしいです。今は男性用の腹巻きもありますし、おしゃれな腹巻きや夏用の薄手の腹巻きも売られているので、ぜひ活用してみてください。腹筋は「自然の腹巻き」
冷え性には運動が効果的ですが、腸を温めるなら腹筋を鍛えましょう。私たちの体温の4割は筋肉で作られています。腹筋は自然の腹巻きです。女性が男性に比べて冷え性が多いのは、筋肉量の差ということですね。 腹巻きは、着ている時にしか身体を温めてくれませんが、腹筋は腸に近いので、腹筋の熱が直接腸を温めてくれます。筋肉量を増やし、自分で発熱できるボディを目指しましょう。寝不足に気を付ける
睡眠と腸の働きは密接な関係にあります。腸では、セロトニンを始めとした様々なホルモンが作られます。腸が冷えて働きが悪くなると、それらの分泌も抑えられてしまうのです。セロトニンが不足すると鬱になりやすくなりますし、セロトニンが材料になるメラトニン(睡眠を誘発するホルモン)も作られません。そのため、腸が冷えると夜に眠れなくなってしまうのです。 さらに、寝不足は腸の働きを悪くします。最近はオフィスワークで、座りっぱなしでPCを見続けている方が増えていますね。そのような仕事を続けていると、頭は疲れているけど身体が疲れていない状態になり、深い眠りがとれなくなってしまいます。寝ないことが腸に悪影響を及ぼし、腸の不調によってまた深い睡眠がとれなくなってしまう、まさに睡眠と腸の悪循環です。 オフィスワークの方は適度な運動と腸温活で、深い眠りと元気な腸を取り戻してしてください。まとめ
「水をたくさん飲む」「サラダを食べる」など、健康によかれと思っての行動が、実は腸を冷やしていることに驚きました。最近では夏のほうが冷えによる不調を起こしている方が多いと石原先生は言います。昔の夏の過ごし方は、冷房がきいている現代の夏にはマッチしていないようです。夏こそお風呂に入ったり腹巻きをすることで、腸を温めるのがおすすめです。
石原新菜(医師)
イシハラクリニック副院長。小学校は2年生までスイスで過ごし、その後、高校卒業まで静岡県伊東市で育つ。2000年4月帝京大学医学部に入学。2006年3月卒業、同大学病院で2年間の研修医を経て、現在父、石原結實のクリニックで主に漢方医学、自然療法、食事療法により、種々の病気の治療にあたっている。
クリニックでの診察の他、わかりやすい医学解説と、親しみやすい人柄で、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動と幅広く活躍中。著書は 13万部を超えるベストセラーとなった『病気にならない蒸し生姜健康法』をはじめ、『「体を温める」と子どもは病気にならない』、『研修医ニーナの731日』” 等30冊を数え、韓国、香港、台湾、ベトナムでも翻訳され出版されている。
日本内科学会会員。日本東洋医学会会員。日本温泉気候物理医学会会員。二児の母。
鈴木光平
主夫・フリーライター。結婚してからは料理と妻の健康管理が担当。座りっぱなしの生活から自身が冷え性になり、温活に興味を持つ。日々の料理から身体を温めることを試行錯誤中。
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