1. 多くの健診に含まれる「便潜血検査」はなんのため?
職場の健診で実施される「便潜血検査(べんせんけつけんさ)」。便潜血検査は、名前の通り便に潜む血を調べる検査です。方法は検体の容器についている棒に、便をこすりつけるというもの。
がんなど大腸の病気で腸壁が炎症していると、便が通るときにこすれて出血することがあります。そのため、便潜血検査は大腸がんの早期発見のためのスクリーニング検査としても行われています。
2. 便潜血検査の注意点は?
便潜血検査には、「1回法」と「2回法」があります。1回法は1日1回便を採取するもので、2回法では2日間にわたって2回便を採取します。
大腸がんでも、毎回の排便で出血するわけではないため、正確な結果を出すには、2回法がおすすめです。統計によれば、進行した大腸がんでは、便潜血検査にて、1回法では60%、2回法では90%が陽性になるとされています。
便秘がちの人は、2日間続けて便を採取するのは難しいこともあるでしょう。しかし、せっかく便潜血検査を行うのなら、検査の精度を上げるために、2回法を選ぶようにしたいものです。
ちなみに、早期の大腸がんでは2回法で50%が陽性になるそう。これは、全ての大腸がんが最初の段階から出血するわけではないためです。逆に言えば、大腸がんであっても、便潜血検査で陰性になることがあるのを知っておきましょう。
間違って陽性が出ることもある
便潜血検査で注意したいのが、検査を行うときの体の状態です。便潜血検査は、便の中に混じった血を見つけるというよりも、血液に反応する検査です。そのため、腸の中の出血でなくても、検体である便に血液が付着すれば、陽性反応が出ます。
特に気をつけたいのが、生理中や痔のとき。便自体に血液が含まれていなくても、便に血液が付着することで、陽性になってしまうので注意が必要です。ちなみに、病気ではないのに検査が陽性となることを、医学用語で「偽陽性」と言います。
3. もしも「陽性」がでちゃったら…
もしも陽性となった場合は、精密検査でより詳しく調べる必要があります。
精密検査で最初に行われるのが、大腸内視鏡検査です。大腸内視鏡検査は、通称「大腸カメラ」とも呼ばれているもの。
検査前日から下剤を飲んで腸の中を空っぽにし、当日の検査で、内視鏡と呼ばれるカメラで腸の中をくまなくチェックし、出血の原因となった病変部を確認します。大腸カメラは、人によっては苦手意識が高い検査の一つです。
しかし、病気の診断や早期治療を開始するためにも、便潜血検査が陽性となった場合は、なるべく早く専門医の実施する検査を受けるようにしてください。
4. 目に見える血便はすぐに受診を
便潜血検査をしなくても、目に見えて血便が出ている場合は、急いで専門医を受診する必要があります。ただ、血便は大腸がんだけでなく、その他の病気でも現れる症状の一つなので、一般の人では判断が難しいかもしれません。
以下に、血便を確認するときのポイントについて挙げます。
ティッシュや便に少し血が付着している
便が固めであるために、肛門が切れてしまった可能性があります(切れ痔)。緊急性は低いと思われますが、排便習慣を改善しても繰り返すようなら受診するようにしましょう。明らかに便に血が混ざっている
便に血液の固まりがついていたり、便の色が赤だったり、赤黒い場合は腸内で出血している可能性があります。いわゆる血便なので、早めに病院へ検査に行ってください。ただし、食べ物や薬の種類によっては、便を赤くするものもあるので注意が必要です。便とは別に真っ赤な血が大量に出
女性の生理期間を除いて、大量に血が出る場合はかなり注意が必要です。進行した大腸がんや炎症性の病気の可能性があります(妊娠中を除く)。貧血などの症状の他に、出血が大量であれば意識が低下し命の危険性も…! 体の状態を見て、必要であれば救急車で病院へ行く必要があります。黒い便が出る
黒い便になる理由にはいくつかありますが、便に血が混ざっている可能性があります。肉食が多くなると、便がこげ茶に近くなりますが、ここで言う黒い便は、黒か限りなく黒に近い色。 黒色便は大腸の出血ではなく、それより上の胃での出血によるものです。それは、胃で出血が起こると、血液中に含まれるヘモグロビンが、胃酸の作用を受けて黒くなるため。大腸の病気ではないないですが、胃炎や胃がんなどの病気の可能性もあるので、早めに受診しましょう。 ちなみに、鉄分のサプリメントを飲んでいる人でも、黒い便が出ます。日頃から便の色を確認し、自分の生活習慣と照り合わせることが大切ですね。 ※血便の判断については、全て自己責任になります。当サイトでは、何らかの不利益が生じても、一切の責任を負えませんのでご了承ください。5. おわりに
健康診断やがん検診の検査項目の一つである便潜血検査。便潜血検査は、比較的安く簡単に行える検査の一つです。大腸のがんやポリープの発見につながることもあるので、1年に1度は行うようにしたいですね。