【参加募集中】麹だけでつくったあまさけ2週間チャレンジ

便秘・下痢のぶっちゃけトーク [医療従事者編](前半)

なかなか人前では話しづらい「トイレの中」の話。人知れずの悩みを抱えている人は結構多い? ならば匿名でと、それぞれのトイレの悩みについて話してもらう座談会を企画しました。
今回、登場いただくのは東京都八王子市にある北原国際病院の医療に従事している4人。医療関係者は「排泄は大事なことなので、便の話も恥ずかしいことじゃありません」と顔出しもOKだったのですが、「匿名座談会」という企画趣旨に合意いただきました。
身体のことをよく知っている医療者ならではの「便秘・下痢」対策とは?

便秘・下痢のぶっちゃけトーク [医療従事者編](前半) 【今回お話してくださった方々】 くるみさん(看護師・45歳)/はるさん(作業療法士・34歳)/みっちーさん(薬剤師・32歳)/あきさん(管理栄養士・33歳)

まずは自己紹介とお仕事から

――今回は医療現場で働くみなさんの「お通じ事情」について教えて下さい。まずはお仕事と簡単な自己紹介をお願いします。

はるさん (作業療法士)

はるです。作業療法士をやっています。 脳や脊髄、神経などの病気で、患者さんの体に後遺症が残ったり、うまく日常生活に戻れなかったりすることがあります。そんな方が上手く自分らしい生活に戻れるようにリハビリサポートをしています。 もちろん、お通じ事情は必ず関わる、とっても大切なお仕事で、一緒にトイレの中に入って、ズボンの上げ下ろしから、姿勢、おしりの拭き方を考えたりもします。

くるみさん (看護師)

看護師のくるみです。一般と救急の外来を担当しています。消化器を担当することが多いので、仕事上、お通じに関わることも多いですね。 元々・脳外科の患者さんがメインだった病院ですので、「便秘が辛くて」来院する方はそんなにいなかったんですが、3年前に大腸ファイバー(大腸内視鏡)を立ち上げてからは、便秘でお悩みの方と接することがすごく増えました。 当院は、神経内科もありますので、パーキンソン病でドーパミンを補うお薬を飲んでいる患者さんは、その薬の副作用が便秘です。その副作用に関連する基本的な排便コントロールは、基本的にお薬ですが、あまりにも便秘がひどくて浣腸する時などは、看護師が関わります。

みっちーさん (薬剤師)

薬剤師のみっちーです。薬剤師なので下剤も扱っています。 入院中ベッドで安静にしていなければいけない患者さんも多いので、元々そうじゃなかったのに便秘になってしまいがちになります。その原因は、運動量が減ったり、環境が変わったせいだったりしますが、「この便秘は病気のせいじゃないか」って悩む患者さんも結構いるんです。 下剤にも色々な種類があって、それぞれ作用機序(効き方)が違うのでうまく組み合わせることで、(便を)出してあげることはできるんですが、できれば下剤に頼らずに自然な排便を促してあげられたらと思って接しています。 色々な薬の特徴を知りつつ、排便のメカニズムも理解しながら、その患者さんに必要なアドバイスをしてあげられたらなって思いながら、日々仕事しています。

あきさん (管理栄養士)

栄養士のあきです。くるみさん(きつね)と同じように、もともとは脳神経外科や循環器科の患者さんと接していて、大腸ファイバーの立ち上げにも参加しました。 たとえば、梗塞(こうそく)などの出血を起こした患者さんは、脳だけではなく、全身の血流が一時的に遮断されてしまい、腹部の血流が悪くなってしまうことがあります。 そういう患者さんは、健康な方であればなんでもないことでも、消化器が反応してすぐに下痢してしまったりします。入院している患者さんはかなり繊細で、健康の人であればなんともない食事の量とか水分のバランスの差が身体に出ますので、どういったものが吸収しやすいか下痢につながりやすいかなど、日常的に注意しています。
――ありがとうございます。皆さん排便のエキスパートという印象です。普段お仕事では、どんな風に下痢や便秘の改善指導などをしていらっしゃるのでしょうか?

くるみさん (看護師)

さっき、みっちーさん(アライグマ)が、薬剤師として下剤の取り扱いに触れてましたが、うちの病院は結構高齢者が多い。便秘の高齢者に下剤を出すと、今度下痢になり、そして、下痢になるとうんこの中のカリウムが流れて脱水症状になってしまいます。そうすると急激に状態が悪くなってしまうので、カリウムが失われることを頭に入れて関わる必要があります。 今の高齢者の便秘の予防は、薬に対して、薬で補うという風になりがちではありますが、本来的には、便秘をしづらい生活習慣が出来上がっているのが理想ですよね。 具体的には、栄養の摂り方、朝食と水分の摂り方、毎朝トイレに座る、ウォシュレットを使う、筋力低下を防ぐ、常用薬の見直しなどですね。 朝起きて水分を摂り、ご飯を食べると、胃直腸反射と言って、胃が「物が入って来た!」みたいな感じで動き始め、それが便意につながるのです。でも、これが活発な人と、そうでもない人もいます。他にも、トイレに座ることを習慣化すると、パブロフの犬のように、脳が覚えて、座るとうんこしたくなります。こんな風に毎日の習慣で便意を促すのも大事ですね。 あとはウォシュレットとかで刺激して肛門のマッサージをすれば、肛門の筋肉をほぐす作用があります。昔の和式トイレは踏ん張る筋肉が自然とついていたんですが、洋式トイレになってそういう踏ん張る筋力が低下していることも高齢者の便秘の原因ですね。
――確かに和式トイレの方が踏ん張れる気がしますね。実際は、どうなのでしょう?

はるさん (作業療法士)

猫背の様な姿勢、つまりは骨盤が後ろに傾くと肛門に繋がる直腸の角度が斜めになってお腹の踏ん張りがきかなくなります。自分自身も、洋式トイレに座っている時に、「どの角度が一番出易いのかなな〜」と骨盤の角度を気にすることがありますね。こういう風に(骨盤を前に出して、背筋を伸ばす姿勢)起こしたほうが良いって言われてて。便座の上で、くねくね動いて、力がはいる位置を研究しています。

くるみさん (看護師)

OT(作業療法士)さんならではの意見ですね。その方が腹筋に力が入りやすい?

はるさん (作業療法士)

はい。日本人は特にこの方が力が入りやすくて。和式に近いウンチングスタイルっていうんですか。

みっちーさん (薬剤師)

懐かしい。
――先ほどの便秘改善指導に「常用薬の見直し」がありましたが、これは具体的にどういうことでしょうか?

くるみさん (看護師)

病院が処方した薬が原因で、便秘になっていないかどうかを見直す、ということですね。 当院の場合は脳のお薬が多いですが、身近な例では、風邪を引いた時に処方される抗生剤。抗生剤を飲むと良い菌も悪い菌も全部流れちゃうので、下痢や便秘につながることがあります。患者さんがご自身で、抗生剤を飲んだ時に、自分のお腹の具合がどうなるかを知ることも大事です。「この抗生剤で私は下痢します」「私は便秘します」とか。だから、そういった薬の見直しもします。

医療者は自分の排便傾向も把握してる!?

――ありがとうございます。皆さんご自身(の排便)はいかがでしょう?

みっちーさん (薬剤師)

私自身は、ストレスで便秘になりやすいですね。でも、そうかと思えば、刺激の強い食べ物や、脂に弱くて豚バラ肉やサーロインを食べると、すぐ下痢しちゃいます

くるみさん (看護師)

一昨日も、その話してたばっかりだね。その時は、アレルギーなんじゃないのって言ってたんです。アレルギーで下痢しちゃう人もいますから。みっちーさん(アライグマ)の自己分析では、脂による下痢みたいです。
――そういう話は日常的にされるんですか?

はるさん (作業療法士)

抵抗感なく話しちゃいますね。チゲ鍋っていうキーワードから、カプサイシンの話題になり、みっちーさん(アライグマ)が「チゲ鍋で下しちゃうんです」って。
――チゲ鍋はどういうところがダメだったんですが。

みっちーさん (薬剤師)

お腹が敏感で辛いものを食べると下しちゃうんです。チゲ鍋は刺激物ですので……。

くるみさん (看護師)

キムチには乳酸菌もあって、腸には良い食べ物って言われたりもしますので、それはもう人それぞれありますよね。 私は、水と食物繊維と糖と油の4つを意識するようにしています。水は足りないと便がコロコロになっちゃうのでもちろん大事ですよね。 食物繊維も便のかさを増すために大事。 油はオリーブオイルを摂るようしていますが、オリーブオイルの成分のオレイン酸は、小腸で消化しきれず大腸まで届いて、腸管を刺激して腸の蠕動(ぜんどう)運動……もこもこもこっていう動きを促進してくれるんです。あと、潤滑油になって滑りがよくなるというのもあります。 これは、私の体験談ですが、サイゼリヤ(イタリアンレストラン)に、パンにオリーブオイルを付けて食べるメニューがあるんですが、それを沢山食べた次の日はスルンって出たんですよね。
――すごいですね、みんなが知ったらサイゼリヤは満員ですよ。でも、糖はどうして?

くるみさん (看護師)

オリゴ糖は、ビフィズス菌を増やして、腸内フローラを良くする善玉菌を増やすので。 ビフィズス菌が少ない人でもオリゴ糖がビフィズス菌の餌になって独自の乳酸菌を作るので、それで腸内フローラに良い腸内細菌が増えて、健康なが便が育成されるんです。 オリゴ糖は今でこそ腸に良いって広く知られていますけど、24年位前に、光岡知足先生のオリゴ糖関係の本をしゃかりきに読んで「オリゴ糖すごい!」って探しても、スーパーマーケットなんかにはオリゴ糖なんて全然売ってなくて、薬局を探しようやく一つ見つかる位でした。

あきさん (管理栄養士)

オリゴ糖は、腸内細菌の餌になる。でも取り過ぎると逆に便が緩くなるというのもありますので、病院の食事では適量を意識しています。 あと、栄養界では、腸内のヒダの栄養になるグルタミンが今注目されていますね。

くるみさん (看護師)

グルタミン酸(アミノ酸の1種。うまみ成分の元になる)のこと?

あきさん (管理栄養士)

グルタミン酸ではなく、グルタミンです。 腸ではオリゴ糖がブドウ糖に膜消化されて、ブドウ糖になって腸内に吸収されますが、その時、腸内のヒダにある細胞のエネルギーとなって腸をサポートするのがグルタミンと言われています。ですので、最近の病院食では腸を整えるためにグルタミンの多い物を添加したりしています。

くるみさん (看護師)

ワカメに含まれる?

あきさん (管理栄養士)

それはグルタミン酸なんですね。

くるみさん (看護師)

グルタミンは具体的には何に含まれます?

あきさん (管理栄養士)

例えば、鰹です。さっきのくるみさん(看護師)が、抗生剤などで腸内細菌が死滅すること腸内環境が乱れるという話をされましたが、食事をされない方は、腸内の細胞がどんどん退化してしまうんですね。

くるみさん (看護師)

腸は使わないとダメなんだね。

あきさん (管理栄養士)

そうなんです。 腸内の細胞が退化すると、同じように腸のヒダもどんどん退化してしまいますが、グルタミンを投与することでヒダの萎縮が抑止できるというエビデンスがありますので、食事の中でグルタミンを投与することで腸内のヒダの退化させない、または、食事の開始にグルタミンを投与して腸内を整えた上で食事していただくということをやっています。

くるみさん (看護師)

なるほどね。

あきさん (管理栄養士)

患者さんに摂っていただいているGFOなんかがそうです。 Gがグルタミン、Fがファイバー(食物繊維)で、Oがオリゴ糖です。腸内に良い3つの組み合わせでできています。最近では新しい製品も開発されていまして、腸内環境を整えることは臨床現場でもすごくホットな話題ですね。

くるみさん (看護師)

腸は、第二の脳って言われてる位ですしね。

あきさん (管理栄養士)

身体も、最初に心臓ができて、脳ができるよりも先に消化器(腸)ができるって言われてますもんね。

くるみさん (看護師)

胃は萎縮すると萎縮性胃炎になり、萎縮がひどくなるとガンにつながることがありますけど、腸も萎縮が進むと、それがガンにつながるとかあるのかな? ドクターに確認しないとわからないですが……。

あきさん (管理栄養士)

どうでしょうか。 でも、日本食ではなくて欧米食やジャンクフードが多いと大腸ガンの発生率が高くなるという数字は出ていますので、食文化で大腸ガンの発生率が変わることが分かっています。ただ、それが腸のヒダが少なくなることによって起こるものなのかは定かではないです……。

くるみさん (看護師)

ところでグルタミンはお肉にも含まれるの? どんな食事に入ってるもの?

あきさん (管理栄養士)

お肉にも、お魚にも、貝類にも多いです。だから、普通の食事をしていれば実は問題ないんです。さっきのグルタミン投与は、普通の食事ができないような患者さん、絶食状態にある方、抗生物質をずっと投与されていて腸内環境が整っていない方に対するケアのお話です。 一般的にはお肉を積極的に食べることで事足りますので「グルタミンを増やして腸内細環境を整える」というのは、あくまで臨床現場の話と思っていただいた方が良いですね。
――でも、興味深い話でした。

あきさん (管理栄養士)

グルタミンは、栄養士界では結構ホットな物質です。先ほど話に出ましたファイバー(食物繊維)とオリゴ糖の2つと合わせて腸内環境も整える3つです。オリゴ糖は必要以上に摂り過ぎると緩い便になってしまいますが……。

くるみさん (看護師)

世の中には「◯◯菌が入っています」みたいな商品が一杯あって、結局何を取ればいいの?ってなるよね。多くの人が、端から端まで試してみるなんてやってるけど、でも自分に定着しているオリジナルの菌を増やすことが、たぶん便秘の人にとっては一番だと思うんですよね。ただ、そのオリジナルが何かを見つけるのが大変なのだと思いますが……。 私は健康診断も担当していて、その問診票のチェック項目に「節々が痛い」「便秘」「下痢」があって、「便秘」にチェックマークが付いてる方には、「便秘で困っていることありますか?」と最後に聞くようにしています。

多くの人の「水分とってます!」は不十分?

――そういった方にはどういうアドバイスをされるんですか?

くるみさん (看護師)

基本的にはさっきの「油、水分、食物繊維、糖」をアドバイスしていますが、「ウサギみたいなコロコロうんこ」の方には水分を摂ってますか?と聞くようにしています。ただ、そういう人に限って「すごく摂取してる」って返ってくることが多い気もしています。 水分は、体内の色々なところで必要になりますし、おしっこにもなりますので、腸が必要とする水分が届いてないんだろうと思うんですね。腸の機能が低下していて、腸が水分を引きよせられなくなっているというのもあると思います。 そういう時は、マグネシウムの多い食事を私はアドバイスしています。マグネシウムが水分を引き付けるので、自分の力でうんこが出るようになりやすいんです。食べ物だと、ひじきがダントツに多くて、昆布、里芋もオススメですね。

あきさん (管理栄養士)

里芋いいですね。里芋のヌメリはムチンという水溶性の食物繊維なんですが、それが水分を保持する役割があるので、コロコロにはそういう面でも良さそうですね。

みっちーさん (薬剤師)

その方の「水分取っています」って、お茶とかコーヒーのカフェインが入ってる飲料のことかもしれません。カフェインが入っていると、結局、おしっこになって出ちゃいますので、私が指導する時は「プラスマイナスゼロ位に考えてください」って言うようにしています

くるみさん (看護師)

利尿作用で、おしっこで出ちゃうってことですね。

みっちーさん (薬剤師)

そうです。患者さんの「水分、摂っています」ってよくよく確認すると、「ペットボトルのお茶飲んでます」「コーヒー飲んでます」ということも多かったりするので……。
――カフェインが入っていないお茶は大丈夫?

みっちーさん (薬剤師)

ルイボスティーやハーブティー、カモミールティー、麦茶はカフェインが含まれないので全然いいです。私は、マグミット(便秘薬)が処方されている患者さんへの服薬指導では、マグネシウム製剤が水分を吸収して腸を柔らかくすることで便の出をよくする薬という風に説明することにしています。この時、水分をいつもよりも1〜2リットル多めに飲むのが理想ですが、現実的には難しいと思いますので、「気持ち多めに、できれば白湯(さゆ)を飲むようにしてください」と説明しています。 私もコーヒーはすごく好きですが、カフェインの無いコーヒーを意識的に飲むようにしています。

くるみさん (看護師)

患者さんへのアドバイスはお水ではなく、白湯?

みっちーさん (薬剤師)

白湯です。冷たいお水は、消化器を冷やしてしまうかなと。ぬるま湯で良いと思いますが、冷えた飲料を高齢者に勧めるのは、なんか抵抗ありまして。 他、硬水か軟水かでも色々と違いますね。
――そうなんですか?

くるみさん (看護師)

日本人は、軟水好きな方多いと思いますが、硬水はマグネシムが多いので便秘には良いのです。市販の物ですと、ボルヴィックやエビアンは軟水。コントレックスやビッテルは硬水ですね。

はるさん (作業療法士)

ただ、硬水は味が苦手です。

くるみさん (看護師)

カルシウムやマグネシムが入っているから、飲みなれない味がするんでしょうね。日本の水は軟水ですから、日本人のDNAは軟水になれているのかもしれませんね。ヨーロッパだと硬水が基本です。
――じゃあ、ヨーロッパの人は便秘知らずかもしれませんね。

くるみさん (看護師)

イギリスは硬水だから紅茶が美味しいみたいな話がありますね。硬水を沸かした時に、マグネシウムの成分は変わったりしない?

あきさん (管理栄養士)

マグネシウムは、タンパク質のようには熱変性が起こらないと聞いています。タンパク質は化合物なので、分解しますが、マグネシウムは元素なので、たぶん分解しようがないかと。

くるみさん (看護師)

話の話題が理系女子になってきてる!笑 じゃあ、硬水が苦手な人は、沸かして紅茶にしたら便秘効果あり?

はるさん (作業療法士)

ただ、紅茶で飲むとカフェインが。

くるみさん (看護師)

そっか。

はるさん (作業療法士)

やっぱり白湯ですね。

くるみさん (看護師)

硬水を沸かして飲むと、どんな味がするんだろうね。

あきさん (管理栄養士)

硬水を沸かしてみたらやかんに白い粒々つきましたね。温めて飲んでみたいって思ったんですが、赤いホーローのやかんだったんですが、中が白くなっちゃいました。でも、成分が沈着してるということは、水分と一緒に蒸発しないということですね。
――硬水を温めるなら専用のやかんがあった方が良いかもしれませんね。 (後編へ続く)