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妊娠中の食事が新生児の腸内細菌に影響する

私たちの腸には100兆個以上の腸内細菌が存在していますが、生まれたばかりの赤ちゃんの腸は無菌といわれてきました。産道を通ることや母乳、離乳食などによって赤ちゃんの腸内細菌は徐々に確立されていきます。
しかし最近の研究で、妊娠中の母親の腸内細菌や食事がすでに、お腹の中にいる赤ちゃんの腸内細菌に影響を与えるのではないかといわれています。
今回は妊娠中の食事や腸内細菌が新生児に与える影響に関する研究を紹介します。

FamVeld/Shutterstock.com

赤ちゃんはどうやって腸内細菌を獲得するか

お腹の中では赤ちゃんの腸内は無菌といわれています。産道を通って生まれてくるときに母親の膣に住んでいる菌を取り込みます。他にも、生まれた病院の空気中の菌、医師や看護師に付着している菌なども取り込むと考えられています。 そのため、帝王切開で生まれて産道を通っていない場合や衛生的すぎる環境で生まれた子供は腸内細菌の多様性が確立されるのが遅いといわれており、肥満やアレルギー疾患などのリスクが高くなる可能性があると考えられています。 生まれたばかりの時には腸内の酸素濃度が高めなので、大腸菌やストレプトコッカスのような酸素を好む細菌が多いですが、母乳を摂取するにつれてビフィズス菌が90%以上を占めるようになります。 赤ちゃんの腸管免疫は未熟なので、ビフィズス菌が乳酸や酢酸などを作り出し、酸が苦手な病原菌が増えないようになっています。 また、母乳に含まれているオリゴ糖はビフィズス菌のえさになるので赤ちゃんは母乳を飲んでいるだけで理想的な腸内環境が形成されていくといえます。生後3か月まではビフィズス菌が優勢ですが、離乳食の開始と共に腸内細菌のバランスが変化していきます。興味深いことに、生まれた時のビフィズス菌と生後3か月以降のビフィズス菌は同じビフィズス菌でも違いがあるそうです。その理由は、母乳の中のオリゴ糖で増えたものか、食事によって増えたものかで変わるといわれています。 このように赤ちゃんは無菌状態から周囲の環境や母乳、食事によって徐々に金を獲得していくと考えられていました。しかし、今回紹介する研究では赤ちゃんの腸内細菌の形成は今まで無菌とされていた子宮内にいる時、つまり生まれる前から始まっている可能性があると報告しています。

妊娠中の高脂肪食は新生児の腸内細菌に影響する

アメリカの研究チームは、2016年8月に妊娠中や授乳中の脂肪摂取量が新生児の腸内細菌に影響を与える可能性があることを「Genome Medicine」誌に発表しました。研究チームは、すでにサルを対象とした研究で妊娠中の高脂肪食が新生児の腸内細菌の形成に影響を与えることを報告しており、今回はその研究結果をふまえてヒトを対象としておこなったものです。 研究チームは157 名の妊婦に対して食事に対するアンケートを行い、脂質の摂取量を推定しました。また、胎便(生まれて初めて排出する便)と生後4-6 週に採取した便に含まれている腸内細菌を解析しました。 妊婦157 名のアンケート結果により、食事に占める脂質の割合は14-55% (平均33%)ということがわかりました。アメリカにおける妊婦の脂肪摂取推奨値は20-35%なので、脂肪摂取量が43.1%の高脂肪食群(13 名)と24.4%の正常群(13 名)を選び、新生児の腸内細菌を比較しました。ちなみに日本の厚生労働省は、20-30%を妊婦と授乳婦の脂肪摂取推奨値としています。 まず胎便を解析したところ、腸内細菌が分離できることを確認でき、高脂肪食群の母親から生まれた新生児は出生時も、生後4-6 週間後でもバクテロイデスとよばれる腸内細菌が正常群の母親から生まれた新生児よりも少ないことが明らかになりました。 バクテロイデスは、ヒトのエネルギー源となる短鎖(たんさ)脂肪酸を生成することが知られています。そのため、バクテロイデスが少ない新生児は栄養となるエネルギーが不足し、成長速度が遅くなる可能性があります。また、バクテロイデスの割合が少ないと免疫の発達が遅れたり、炎症性の物質を抑えづらくなる可能性があります。将来的に肥満となる可能性も今までの研究から指摘されています。 つまり、今回の研究によって妊娠中、また授乳中の食生活も新生児の腸内細菌形成に影響を与えることが明らかになりました。 ただし、なぜ高脂肪食が新生児に影響を与えるのかというメカニズムは明らかになっていません。 動物実験では、今まで無菌とされてきた胎盤や羊水と胎便の細菌の組成が同じであることがわかっています。胎児は母親の羊水を飲んでいるので、もしかすると羊水などを介して母親の食生活や腸内細菌の影響を受けているのかもしれません。今後さらなる研究が行われることが期待されています。

妊娠中の腸内細菌の乱れが新生児の脳発達に影響を与える可能性

妊娠中の高脂肪食が、新生児に影響を与えている可能性があることがわかりました。では、妊娠中の腸内細菌が乱れている場合には新生児に何か影響があるのでしょうか。 2016 年1 月に日本の研究チームが発表した報告によると、マウスを対象とした実験で腸内細菌を抗生物質によって減らした母親マウスから生まれたマウスは、生後4 週間の行動に異常を認めました。腸内細菌のバランスが正常な母親マウスから生まれたマウスに比べて、夜行性の活動量が少なく、新しい環境では不安により壁から離れるのを嫌がる行動が確認されました。
Administration of Non-Absorbable Antibiotics to Pregnant Mice to Perturb the Maternal Gut Microbiota Is Associated with Alterations in Offspring Behavior.を元に引用改変
今回の研究から、母親の妊娠中の腸内細菌のバランスを保つことは子供の脳が健康に発達するために重要であることがわかりました。

さいごに

今回は、妊娠中の高脂肪食や腸内細菌が新生児の腸内細菌形成や脳発達に与える影響に関する研究を2 つ紹介しました。 妊娠中のバランスの悪い食事によって子どもの腸内細菌のバランスが乱れてしまう可能性があるのであれば、妊娠中にバランスのとれた良い食事を摂ろうと心がけることは新生児の正常な発育のために重要といえます。ただし最初の研究では、高脂肪食に注目しているだけで、母親の腸内細菌は解析していません。今後、高脂肪食が母親と新生児にどのように影響するかメカニズムも含めて研究が進むことが期待されます。

参考文献

1) Chu DM, Antony KM, Ma J et al. The early infant gut microbiome varies in association with a maternal high-fat diet. Genome Med. 2016 Aug 9;8(1):77. doi: 10.1186/s13073-016-0330-z.
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27503374)
2) Tochitani S, Ikeno T, Ito T et al. Administration of Non-Absorbable Antibiotics to Pregnant Mice to Perturb the Maternal Gut Microbiota Is Associated with Alterations in Offspring Behavior. PLoS One. 2016 Jan 20;11(1):e0138293. doi: 10.1371/journal.pone.0138293.
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26789865)
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