腸活から美容と健康まで、たくさんの効果が期待できる発酵食品。日本にはたくさんの発酵食品がありますが、日本人にとってもっとも馴染みのあるものといえば、醤油や味噌などの発酵調味料ではないでしょうか。多種多様な発酵調味料が販売されていますが、選ぶもので腸への影響も変わってくるそう。そこで日本発酵文化教会の認定講師としてご活躍する、発酵のプロフェッショナル・浅沼彩子さんに、発酵調味料の選び方についてお伺いしました。
発酵食品にはどんな効果があるの?
浅沼さんのお話によると、食材は発酵するとビタミンB群やアミノ酸、カルシウムなどが生まれ、身体をつくる栄養素が豊富になるそう。同時に消化吸収がよくなるため、発酵食品は腸にも優しい食品です。発酵食品を食べると、腸細菌類が3〜4日間活性化します。そのため、発酵食品を毎日少しずつ継続して摂ることが、腸活をスムーズに進めるポイントになります。
発酵食品が腸活に効果的な理由を詳しく知りたい方は「発酵食品は腸活にいいの?専門家に発酵食品について聞いてみた」をご参照ください。
発酵調味料を選ぶときのポイント
身近な発酵調味料と言えば醤油。しかし、醤油を買いにスーパーにいくと、さまざまな商品が陳列棚に並んでいます。違いは名前だけで中身は同じものなのか、それとも全く別物なのか、知識がないとなかなか分かりませんよね。
浅沼さんに発酵調味料を選ぶ方法をお聞きしたところ、”きちんと発酵しているもの”を選ぶのがポイントなんだそう。昔ながらの製法でつくられた調味料や、パッケージにはっきりと発酵していることが書かれているのも一つの目安。製造過程できちんと発酵させているものを選びましょう。
お馴染みの味噌や醤油、みりんなどのチェックポイント
味噌
簡単に見分ける方法の一つが空気穴。パッケージや、味噌の上に敷いてある紙に空気穴が開いていれば、発酵を止めずに酵素が働いている可能性が高いです。空気穴がなくしっかり密閉されているものは、恐らく加熱殺菌や酒精などを添加することにより、発酵を止めて品質の変化を防いでいるものが多いです。
あとは天然醸造などの記載があって、食品添加物の表記がないものを選ぶのもおすすめですね。熟成期間が短いものはアミノ酸や出汁を入れることで旨味を添加している商品が多いんです。
醤油
発酵を止めずに酵素が働いている醤油は、醤油醸造元などで要冷蔵で販売されているものだけです。常温の陳列棚に並んでいるものは、ほとんとが精密にろ過されて酵素や微生物を取り除いで販売されています。ろ過していないものや手作り生揚げ醤油(業者の様な精密なろ過はせず、絞っただけの生の醤油)を常温で置いておくと、変色したり密閉しておくと容器が破裂することも。酵素が動いている醤油が欲しいときは、ご自身で仕込んでみる、または醤油蔵に行って生揚げ醤油を絞ってもらうのがおすすめです。
みりん
みりんは大きく分けて2種類、本みりんとみりん風調味料があります。パッケージにはっきりと書かれているので、みりんは見分けやすいと思います。
時間をかけて発酵させてつくる本みりんは、アルコールが含まれるので酒税法がかかります。そのため、酒屋などアルコール取扱店だけで販売することができます。一方、みりん風調味料は発酵させずに食品添加物でみりん味にした調味料。アルコールが含まれていないので、どこでも販売できて安価なのが特徴です。発酵しているものなら、本みりんを選びましょう。
麹の甘酒
市販の麹の甘酒はどれも発酵はしていますが、市販のものはほとんど加熱して発酵を止めています。それでも、麹の甘酒は加熱してもビタミンなどは残るので、栄養素を摂るには十分だと思います。ただし、食材を漬け込むなど漬け床として使う場合は、加熱処理していない生甘酒を選ぶのがおすすめ。生卵に甘酒を入れて割りほぐし、しばらく置くか時間があるときは冷蔵庫で一晩寝かせると、麹の酵素が卵のたんぱく質を分解してくれてふわふわの卵焼きを焼くことができますよ。
塩麹
塩麹も甘酒と同じように加熱して発酵を止めているか、塩分濃度を上げて販売されているものがあります。生の塩麹で添加物の記載がなければ、塩分濃度が高い可能性がありますね。
市販のもので塩分表記があればチェックしてみましょう。15%以上の塩を加えると酵素の働きが弱くなります。手作りの場合は全体の12%の塩分量をベースに伝えしていますのでご参考になさってください。お料理で使う場合は、レシピに記載されている塩の倍量を目安に加えてみてください。レシピが塩小1杯だったら塩麹小2杯です。また、塩化ナトリウムではなく自然塩を使っているものがおすすめです。
お酢
お酢は酢酸菌がつくる食酢と、クエン酸がつくるもろみ酢の2種類に分かれます。どちらも酸っぱい成分ではありますが、食酢は血管を広げてくれるので高血圧の方などにおすすめ、もろみ酢は疲労回復に効果的です。お酢はカルシウムと一緒に摂ると骨粗鬆症のリスクが半減すると言われています。切り干し大根の酢の物やサラダにすると手軽に摂ることができますよ。
発酵調味料を腸活に取り入れるときのポイント
例えば麹の酵素の失活温度は65度前後なので、発酵調味料も同様に、できれば加熱せずにそのまま頂くのが理想です。活性している酵素を腸に取り入れることで、腸内細菌を活性化してくれる効果があります。しかし、発酵調味料は加熱して酵素が失活したものでも善玉菌のエサになり、腸内バランスを整えてくれます。どちらにせよ、私たちの身体にとても優秀な食品なので、腸活にぜひ取り入れてみてください。毎日少しずつ摂ることが、腸内細菌を活性化させるポイントになりますよ。
まとめ
ライター コバヤシマユコ
手作りの発酵食品とヨガで腸活をするフリーライター。息子のアレルギー改善策としてはじめたのがきっかけの腸活ですが、今ではすっかり生活の一部になっています。
便秘よりも下痢になりやすい体質。下痢になったら米麹の甘酒を飲んで、腸を整えています。
日本発酵文化協会 認定講師・発酵プロフェッショナル・発酵・美腸生活研究家 浅沼彩子
「見えない生き物(菌たち)と共生し、発酵食を取り入れることで美腸に繋げ、美しく若々しく、笑顔とエネルギー溢れる毎日を手に入れる」ことをテーマに、発酵プロフェッショナルとして活動中。麹やフルーツ酵母、季節の仕込みもの(味噌・醤油・醤・アンチョビ・梅・ぬか床・麹など)で腸から美しくなる発酵料理教室や天然酵母料理、症状に合わせた腸内環境コーチングなど、東京や湘南エリアを中心に行っている。
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