【医師監修】子供が下痢になったらどうすればいい?症状の見極め方や対応を専門家に聞いてみた

子供が下痢になったとき、どんな対応をすればいいのか不安になることがあると思います。お子さんの症状を観察し、適切な対応を考えましょう。今回は子供が下痢になったときの症状の見極め方や対応について済生会横浜市東部病院 十河剛先生に教えてもらいました。

下痢の症状とその見極め方

ここでは、子どもの下痢の症状の見極め方と病院の受診目安について説明します。

子どもの下痢のほとんどはロタウィルス、ノロウィルスなどによる急性胃腸炎

急性胃腸炎は、長くても2週間以内に症状がおさまります。そのため、下痢の症状を確認したら、そこからまずは2週間様子を見ましょう。

以下の7つの症状は、重症脱水を示唆する兆候です。2週間様子を見る中で、子どもにこのような脱水の所見が見られた場合は、すぐに病院を受診するようにしてください。

・見た目に調子が悪そう,もしくはだんだん調子が悪くなる
・ちょっとした刺激に過敏に反応する,反応性に乏しいなどの反応性の変化
・目が落ちくぼんでくる
・頻脈
・多呼吸
・皮膚緊張(ツルゴール)の低下
・手足が冷たい,もしくは網状チアノーゼ

重症脱水の兆候がなくとも、「持続する嘔吐」や「大量の排便がある」という症状がある場合は、今後脱水が進行していく可能性があります。

また、「糖尿病や代謝性疾患などの基礎疾患がある」 「生後2か月未満」という場合は、特殊な状況なため、通常とは異なる配慮が必要です。早めに医療機関を受診しましょう。

その他、胃腸炎以外の疾患を示唆する兆候として、下記の7つの症状にも要注意です。

・生後 3か月未満の乳児の 38℃以上の発熱
・黄色や緑色(胆汁性)の嘔吐もしくは血性嘔吐
・反復する嘔吐の既往
・間欠的腹痛
・くの字に体を折り曲げる,痛みで泣き叫ぶ,あるいは歩くと響くなどの強い腹痛
・右下腹部痛,とくに心窩部・上腹部から右下腹部に移動する痛み
・血便もしくは黒色便

見落としやすいのが「黄色や緑色の嘔吐」。「胃液」だと思う方が多いですが、実はこれは胃の下にある十二指腸から出てくる消化液で、「胆汁」と言います。腸閉塞が起こっているときなどに出てくるものですね。

紹介した18の症状にどれか1つでも該当する場合は、早めの受診が必要です。該当する症状が見られないなら、年齢に応じた鑑別をしましょう。子供の下痢の9割は急性胃腸炎なので、2週間様子を見て、これらの症状がなければ自然とおさまるものです。

2週間以上も下痢の症状が続く場合は、慢性腸炎の疑いが

下痢の症状が2週間以上続くようであれば、慢性下痢症の原因の一つである慢性腸炎の可能性があります。以下の症状がある場合は、さまざまな検査を行う必要が出てきます。

・体重減少
・成長障害
・貧血、血便、下血
・夜間の下痢、便失禁
・消化管外症状(発熱、発疹、関節痛、肝機能以上、など)
・腹部膨満
・腹部の中等度から高度の圧痛

このような症状がない場合、次に考えるのは「直近の抗菌薬の投与経験」。風邪を引いたときにもらえる抗生物質は、実は下痢が慢性化する原因になることがあります。抗生物質の使用によって、腸内の善玉細菌が死んでしまうと、バランスが崩れて下痢を引き起こしてしまうのです。

あとは何か特定の食べ物に反応して下痢をしてしまう場合は、食べ物のアレルギーによって生じる「好酸球性胃腸炎」が、便秘と下痢を繰り返したり、特定のイベントに反応して下痢になる場合は、過敏性腸症候群が考えられますね。ヨーグルトが腐ったような酸っぱい匂いの便の場合は、2次性乳糖不耐症が考えられます。

便の状態が分かるような記録を持っていくと、受診がスムーズに

病院を受診する際、最も重要なのは「便の状態が把握できること」です。

おむつを持ってきてくれると分かりやすいですね。それが難しいなら、便の状態を写真で撮るだけでも良いです。その場合は、一回ではなく何回も撮影し、「便の状態の変化」が分かるように記録してもらえると分かりやすくて良いと思います。

もう一つ重要なのが、排便日誌。診察時に「下痢です」と言うので「毎日下痢が出るのかな」と思ったら「週に1回ゆるいうんちが出る」と答えが返ってくるくらい、下痢や便秘というのは、人によって感覚がまったく異なるものです。「この日はうんちが何回出て、こういう形のうんちがどれくらい出ました」という客観的な記録である排便日誌があると、便秘や下痢かどうかの判断がしやすくなります。

市販の下痢止めなどは飲まない方がいい?

基本的には、下痢止めの使用はおすすめしません。急性胃腸炎の場合は、悪い菌やウィルスを排出するために下痢が発生しているので、それを止めてしまうことはよろしくありません。

慢性の下痢に関しても、病気が特定されると、病気によって使用していい場合と病気が悪化するという理由で使用が禁止される場合とに分かれます。下痢止めの使用はおすすめしませんが、使用するにしても病気の特定が済んでからが鉄則です。

子供が下痢になったときの食事内容

下痢のときは、離乳食やおかゆがいいのではないかと考える方が多いと思われますが、急性胃腸炎の場合は、基本的に食事制限はありません。脱水症状が改善されれば、年齢相当の普通の食事を始めてください。下痢が始まった時点ですぐに脱水になるわけではないので、下痢が始まったら速やかに自宅で経口補水液による経口補水療法を開始してください。このとき、塩分が含まれていない、もしくは少ない水分だと、おしっことして体の外に出てしまい、脱水の予防にはならないので注意です。

まとめ

お子さんが「下痢かもしれない」と思ったときは、まず2週間様子見て、急性・慢性どちらかの症状があったときに初めて病院の受診を検討するといいようです。受診する際には、便の状態が把握できる記録を持っていくと、スムーズに診断内容が分かるのでおすすめです。

この著者の他の記事を読む